逮捕後、72時間以内の刑事弁護が
運命を左右いたします
警察官は、被疑者を逮捕してから48時間以内に被疑者の身柄を送致しなければならず、検察官は送致を受けてから24時間以内に勾留請求するか否かを決めなければなりません。
そこで、捜査機関は、逮捕後72時間(上記48時間以内+24時間以内)の制限時間内に、被疑者の取調べや実況見分等の証拠収集を行いますが、この逮捕後72時間に被疑者と接見・面会ができるのは弁護士のみであり、被疑者の家族や友人は会うことができません。
この間に被疑者が犯行を行っていないにもかかわらず、犯行を行った旨の自白をした場合には、事後的に本当はやっていないと犯行を否認したとしても、一度した自白を覆すのは容易なことではありません。
無実の人が自白するなんてありえないと思うかもしれませんが、無実の人にとっては、逮捕取調べは、衝撃的で、極度の不安、恐怖、緊張状態のなかで行われるため、認めれば釈放されるかもしれない、楽になりたいなどという思いから「やりました」と言わざるを得ない状況に追い込まれることがあります。虚偽自白は、冤罪に繋がることから、絶対に防がなければなりません。
また、被疑者が犯行を認めている場合においても、以下述べるとおり、勾留が認められると重大な不利益を被るため、勾留阻止活動を行うことが重要です。勾留阻止活動は、逮捕後72時間以内という限られた時間内に必要な資料を集め、勾留の必要性がないことを検察官及び裁判官に対して説得的に説明をしなければなりません。
このように、否認事件、認め事件を問わず、逮捕後72時間の弁護活動が被疑者の運命を左右しますので、被疑者が逮捕された場合には、早急に弁護士に相談する必要があります。
勾留されてしまうと、最大20日間の身柄拘束になります。
勾留請求が認められた場合には、勾留請求の日から原則10日間勾留されることになり、10日を超えない勾留延長が1度だけ認められています。つまり、最大20日間身柄が拘束される可能性があります。
逮捕後72時間とは異なり、家族や友人も面会に来ることはできますが、20分程の短い面会時間であるため、逮捕と同様外部との連絡を容易にとることはできない状況です。
検察官は、最大20日間の勾留期間に、実施された被疑者の取調べや捜査結果を基に被疑者を起訴するかどうかを決定します。
一般的に、検察官は、起訴して有罪にできる高度の見込みがなければ起訴しませんが、虚偽自白も極めて重要な証拠であるため、いわゆる否認事件の場合、虚偽自白だけは絶対に防がなければなりません。
しかし、逮捕後72時間より勾留期間は長く、適切な弁護活動がなされなければ、その間、被疑者が取調べに耐えることは至難の業です。
また、被疑者が犯行を認めているいわゆる認め事件の場合においても、犯罪の軽重、犯人の年齢、境遇、前科前歴の有無その他の情状(示談状況、被害弁償の有無等)を総合的に考慮して、起訴する必要がないと考えられる場合には、起訴猶予となります。
したがって、認め事件の場合においては、勾留期間の間に、示談や被害弁償、再犯防止のための環境調整などを行うことが不起訴を獲得するうえで極めて重要になります。裏を返せば、勾留期間中に示談等の活動を行えば、不起訴になる事件でも、何もしなければ起訴されてしまいますし、起訴後に示談をしたとしても不起訴になることはありません。
このように、勾留期間の刑事弁護も被疑者にとって、極めて重要なものであり、運命を左右するものといえます。
勾留をされてしまうデメリット
上記に記載のとおり、最大20日間身柄が拘束される可能性があります。
そうすると、その期間、仕事や学校に行くことができないため、解雇や退学処分を受ける可能性があります。逮捕後72時間で釈放された場合には、事件のことを職場や学校に知られない可能性も十分にありますが、勾留された場合、事情を説明せざるを得ないケースが殆どでしょう。また、警察の留置施設などに勾留されてしまうと、毎日のように警察官・検察官の取調べを受けることになり、外部との連絡も十分にとることができないため、被疑者の精神的苦痛は計り知れません。
そのような事態を避けるために、早期に私選弁護人を選任し、逃亡や罪証隠滅のおそれがないこと等を検察官や裁判所に説明をして勾留阻止活動を行うこと、勾留決定が認められた場合にも、勾留決定に対する準抗告(裁判所の決定に対しその取消を求める)を行い、早期に被疑者の身柄を解放させるべきといえます。
勾留されず在宅事件となった場合
在宅事件とは、 身柄拘束(逮捕・勾留)されずに日常生活を送りながら捜査や裁判を受ける刑事事件です。犯罪の嫌疑があったとしても、逃亡や罪証隠滅のおそれがなければ、身柄拘束されることを防ぐことができます。
勾留阻止活動や勾留決定に対する準抗告が功を奏し、在宅事件と切り替わった場合には、逮捕前と変わらず、会社や学校に行くことが可能となります。
ただし、不起訴になったわけではないので、捜査機関からの出頭の要請があれば、出頭しなければなりませんし、いわゆる認め事件の場合には、示談、被害弁償、再犯防止のための環境調整等の活動を行うことが重要であることに変わりはありません。
起訴された場合
起訴されてしまうと99%有罪となり前科がついてしまいます。
検察官は、有罪判決を得られるという確信がない限り、基本的には起訴しません。その結果、起訴された場合の有罪率は、令和4年版犯罪白書によると、通常第一審における有罪率は99.25%と極めて高いものとなっています。
当然、起訴された事件の殆どがいわゆる認め事件であることから、否認事件のみの有罪率が99%を超えているわけではありませんが、99%の有罪率は軽視できるものではなく、もし冤罪であれば、まずは、起訴を未然に防ぐための刑事弁護が不可欠です。
前科が付くデメリット
前科がつくと就職活動において、前科を申告しなければならなくなる場合があります。賞罰について正しく申告していなければ、会社によっては「経歴詐称」や「申告義務違反」ととらえ、内定取り消しや解雇になる可能性もあります。
また、公務員など、前科があることが欠格事由に該当する職業があります。かかる職業の場合、前科がつくかつかないかは、死活問題であるといえます。
さらに、検察官や裁判官は、前科・前歴を処分や判決の重要な考慮要素にしているため、前科があること自体が不利益な考慮要素といえます。
したがって、逮捕された場合には、早期に弁護士に依頼し、検察官に起訴されないような刑事弁護を受けることが極めて重要です。
国選弁護人と私選弁護人の違い
私選弁護人は自分で選んで契約をした弁護士、国選弁護人は資力がない等を理由に私選弁護人を選べない場合に国が選任する弁護士のことです。
私選弁護人と国選弁護人は、弁護活動の範囲に違いはありません。また、私選弁護人を選任する場合、各事務所によって費用の基準に違いはありますが、弁護士費用がかかります。一方で、国選弁護人は、国が費用を負担し、基本的に本人が弁護士費用を支払うことはありません。ただし、被疑者に資力がある場合には、裁判所から、国選弁護費用の支払いを命じられる場合もあります。このように、費用面においては、国選弁護人を選ぶメリットもあります。
ただし、私選弁護人は、勾留前の段階でも選任できますが、国選弁護人は勾留後でなければ選任できません。これまで述べてきたとおり、逮捕後72時間の弁護活動が被疑者の運命を左右することがありますが、この時間には、国選弁護人が選任されることはなく、私選弁護人しか弁護活動できません。また、被疑者が勾留されていない、いわゆる在宅事件の場合にも、国選弁護人が選任されることはなく、私選弁護人しか弁護活動できません。
また、私選弁護人は、刑事弁護の経験豊富な弁護士を自分で選べますが、国選弁護人は、国が国選名簿に登録された弁護士を順番に選任することになるため、自分で弁護士を選ぶことはできません。運よく経験豊富な弁護士が選任されることもありますが、経験に乏しい弁護士が選任されることがあります。たしかに、事件によっては、どの弁護士が選任されても結論がそれほど変わらないこともありますが、弁護士の弁護活動によって、逮捕勾留を阻止できるか、不起訴・起訴猶予処分を獲得できるか、執行猶予が付くか実刑になるか、有罪か無罪かなど、被疑者の今後の人生を左右するほど結論が大きく左右されることもあります。
弁護士の選択 | 料金 | 接見可能時期 | |
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国選弁護人 | 不可能 | 安い | 勾留状が発せられた後から |
私選弁護人 | 可能 | 高い | 逮捕直後から速やかに |