監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士
どんなに安全運転を心がけて運転をしていても、相手の不注意により事故が起こる場合もあります。
こうした、被害者に全く事故の責任がない事故(過失0)を「もらい事故」といいます。
「自分には事故の責任がないのだから、当然慰謝料を多くもらえるはずだろう」とお考えの方もいると思いますが、その考え方は危険です。相手方保険会社が提示する金額でそのまま示談してしまえば、適正な慰謝料を受け取れない可能性もあります。
この記事では、もらい事故の慰謝料について、詳しく解説していきます。ぜひご参考ください。
Contents
もらい事故と通常の事故の違い
もらい事故とは、被害者に一切の過失が付かない事故を指します。
一般的な交通事故では、被害者・加害者双方に過失が付くことが多く、その責任割合を数字で表したものが過失割合です。
具体的には、「過失割合7対3」や「過失割合85対25」のように表します。
一方、もらい事故の場合は、被害者に過失がない事故ですので、過失割合は「100(加害者)対0(被害者)」「10(加害者)対0(被害者)」などと表されます。
もらい事故の場合は、過失相殺がなされず、被害者が被った損害の全てを受け取ることができます。
※過失相殺:損害の公平な分担の観点から、被害者についた過失分だけ、慰謝料を含む示談金から減額されることをいいます。
もらい事故になりやすい例
もらい事故になりやすいのは、相手の不注意やミスにより、被害者が一方的に巻き込まれた事故です。具体的には、以下のようなケースが当てはまります。
- 赤信号で停車中に、後ろから追突された
- 駐車場に停めていた車がぶつけられた
- 交差点に青信号で進入したところ、赤信号無視の相手と出合い頭にぶつかった
- 対向車線を走る車がセンターラインを越えて走行し、衝突した
- 青信号で横断歩道を渡っていたら、車にはねられた
もらい事故の慰謝料相場はいくら?
もらい事故は、「過失相殺が適用されず、慰謝料を満額受け取れることができる」というだけで、もらい事故特有の慰謝料相場はありません。
通常の事故と同じように、怪我の内容や程度、治療内容、入通院日数・期間、後遺障害の有無などによって慰謝料額が算定されます。
基本的な交通事故の慰謝料相場については、以下のリンクで詳しく解説しています。ぜひご参考ください。
交通事故の慰謝料相場についてもらい事故ならではの注意点
もらい事故では「過失相殺が適用されない」、「示談金が満額受け取れる」と聞くと、何も心配はないように思えますが、「もらい事故ならではの注意点」がいくつかあります。
どのようなことに注意すべきか、以下で見ていきましょう。
もらい事故は保険会社が示談交渉を行えない
もらい事故で注意したいことのひとつは、ご自身が加入する任意保険の示談交渉サービスが利用できないということです。
被害者と加害者双方に過失がある一般的な事故の場合は、お互いが加入する保険会社が当事者を代行して示談交渉を行います。
しかし、もらい事故の場合は被害者に過失がないため、被害者が加入する保険会社の示談交渉サービスを利用することができないのです。
そのため、被害者自身で相手方保険会社と示談交渉をしなければなりません。
なぜなら、相手方に損害賠償金を支払う必要がないのに、保険会社が被害者の代わりに示談交渉を行うことは、弁護士法で禁止されているからです。
しかし、相手方は被害者に対し損害賠償金を支払う義務がありますので、保険会社が示談交渉を進めてくるでしょう。
したがって、もらい事故の場合はご自身で示談交渉を行わなければならず、適切な損害賠償金が受け取れなくなってしまうおそれもあります。
「もらい事故で過失ゼロだから慰謝料額に心配はない」というのは間違い
交通事故の慰謝料には3つの算定基準があり、どれを用いるかによって慰謝料の金額が大きく変わります。基本的に弁護士基準の慰謝料額が最も適正額に近いですが、保険会社が弁護士基準で交渉してくることはほとんどないため、注意が必要です。
【交通事故の算定基準】
- 自賠責基準
自賠責保険が算定に用いる基準です。基本的な対人賠償の確保を目的とするため、3つの基準のうち、最も低額になることが多いです。 - 任意保険基準
任意保険会社が算定に用いる基準です。保険会社ごとの独自の基準で、詳細は非公開ですが、基本的に自賠責基準とほぼ同額かやや高額になる程度でしょう。 - 弁護士基準
裁判所や弁護士が算定に用いる基準です。過去の裁判例をもとに設定されていて、被害者が受け取るべき適正な金額となります。3つの基準のなかで最も高額になることが多いです。
【当法人の弁護士が加入し、慰謝料が増額した事例】
相手方保険会社は、最初から弁護士基準の慰謝料額を提示してくることもありませんし、弁護士が介入しない限り弁護士基準の慰謝料額に応じてくれることもほぼありません。
弁護士が介入することでどのくらい慰謝料が増額するのか、当法人の事例をご紹介します。
- ①頚椎捻挫のケースで「約50万円→約100万円」に増額
- ②後遺障害が残ったケースで「約60万円→約300万円」に増額
もらい事故に見えても過失割合で揉めることがある
もらい事故に見えても、相手方保険会社が、被害者にも一定の過失があると主張してくることがあります。
過失割合で揉めやすいケースとして、以下のようなものが挙げられます。
- 正しい事故状況を示す証拠がない
⇒ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、ブレーキ痕などの明確な証拠がない - 事故状況について当事者間の証言が食い違っている
⇒ウインカーを出したか、前方不注意があったか、速度違反があったか、停車していたか など - 駐車場内での事故
⇒駐車場での事故に当てはめられる、過去の判例データが少ないため
もらい事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット
もらい事故の場合、被害者が加入する保険会社に示談交渉を代行してもらうことができません。
そのため、示談交渉を有利に進めるためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。
以下、弁護士に依頼するメリットを詳しく見ていきましょう。
弁護士に依頼すれば高額の慰謝料を受け取れる可能性がある
弁護士に依頼すると、「弁護士基準」を用いて慰謝料やその他示談金を算出し、交渉していきます。
そのため、相手方保険会社が提示する慰謝料額よりも、高額な金額で示談が成立する可能性が高まるでしょう。
相手方保険会社は、たとえ被害者が弁護士基準で算出した金額で交渉しても、「根拠に乏しい」として首を縦に振ってくれることはまずありません。
しかし、弁護士が代理人として交渉することで、過去の判例やデータから弁護士基準の根拠を主張・立証することができます。
また、保険会社は、弁護士が入ると裁判を意識します。裁判になれば弁護士基準が認められる可能性が高いうえに、裁判の手間や費用がかかります。
余計な労力やコストを避けるためにも、交渉の段階で弁護士基準に近い慰謝料を支払ってくれる可能性が高まります。
相談のタイミングが早いほどメリットが大きい
交通事故に遭われ、弁護士に相談しようと考えても、「どのタイミングで相談すればいいの?」と不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。
弁護士に相談するタイミングは、早ければ早いほど多くのメリットを受けられます。
弁護士に任せられるのは示談交渉だけではありません。事故直後の対応が示談金に大きく影響するため、早い段階から弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 適正な慰謝料を受け取れるよう、通院方法についてアドバイスが受けられる
- 相手方保険会社から治療費打ち切りの打診をされた場合に延長交渉してもらえる
- 後遺障害等級認定申請のサポートをしてもらえる
このように、早い段階から弁護士に相談することで、「どうしたらいいかな」と不安に思ったことを弁護士にすぐに相談でき、適切な対応を取ることができます。
後遺障害等級認定の申請についてサポートを受けられる
治療を続けても症状が良くも悪くもならない、一定の状態となり、後遺症が残った場合には、「後遺障害等級認定申請」の手続きを行います。
1~14級まである後遺障害等級に認定されると、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益を新たに請求できるため、示談金が大幅に増額します。
しかし、後遺障害等級認定申請の手続きを行っても、誰もが等級認定されるものではありません。
弁護士であれば後遺障害等級認定申請の手続きに対し、以下のようなサポートをすることができます。
- 治療や検査の受け方や症状固定のタイミングのアドバイス
- 医師に作成を依頼する「後遺障害診断書」の精査
- 必要な書類の準備や申請手続きの代行
また、もし申請結果が「非該当」であっても弁護士に依頼して異議申立てをすることで、後遺障害等級に認定される可能性があります。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士費用特約があれば弁護士費用を自己負担なしで依頼できる
弁護士費用特約とは、ご自身やご家族の保険契約に追加できるオプションのひとつで、次のような特徴があります。
- 交通事故や日常生活においてトラブルに遭われた方が、弁護士に相談・依頼する際に発生する費用を、保険会社に負担してもらえる
- 通常、1回の事故・被害者1名につき、最大300万円までの弁護士費用を負担してもらえる
- 交通事故で、一般的に弁護士費用が300万円を超えることは稀なので、安心して弁護士に依頼できる
もらい事故の慰謝料に関するQ&A
もらい事故に遭いました。怪我なしで物損のみですが慰謝料は請求できますか?
交通事故の被害が物損のみの場合には、基本的に慰謝料は受け取れません。
そもそも「慰謝料」とは、交通事故で怪我をしてしまったり、後遺障害が残ってしまったり、被害者が亡くなってしまったことによる精神的苦痛に対し支払われるものです。
物損の場合は、壊れた車や物などに対し、財産的損害の賠償を行うことで、精神的苦痛も慰められると考えられているため、慰謝料が発生しないのです。
ただし、事故により家族のように長年連れ添ったペットが亡くなってしまった場合には、例外的に慰謝料を請求できる場合もあります。
もらい事故の慰謝料と休業損害は別々に請求できますか?
「慰謝料」と「休業損害」は異なる性質のため、どちらも受け取ることができます。
- 慰謝料…交通事故により被った精神的苦痛に対する補償
- 休業損害…交通事故により働けなかったことによる減収分の補償
休業損害は、減収の補償ですが、専業主婦(夫)の方でも、事故により家事労働ができなかった場合は請求できる可能性があります。
交通事故では、慰謝料や休業損害の他にもたくさんの請求費目がありますが、どの費目を請求できるのかは、事故様態や怪我の状況など個別事情により様々です。
また、交通事故の示談交渉は揉めやすいため、慰謝料や休業損害に限らず弁護士に相談されることをおすすめします。
休業損害について
もらい事故に遭ったら弁護士にご相談ください
「もらい事故だから、慰謝料は全額もらえる」と安心するのは危険です。
確かに、もらい事故は被害者に非がない事故ですが、相手方保険会社の提示する金額は被害者の受け取るべき金額とはいえない場合も多くあります。
さらに、もらい事故では被害者ご自身が相手方保険会社と交渉していかなければならないため、大きな精神的負担を負うことが考えられます。
そのため、もらい事故だからと安心せず、交通事故に遭われた場合は弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故に詳しい弁護士であれば、事故全体をサポートするだけでなく、保険会社と対等に交渉していけるため、慰謝料や示談金が増額する可能性が高まります。
私たち弁護士法人ALGは、これまで数多くの交通事故の事案を解決に導き、交通事故に詳しい弁護士が多数在籍しております。「こんなことで相談していいのかな」「弁護士費用が不安だな」といった方も、まずは一度お問い合わせください。

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保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)
