監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士
交通事故のケガで首の痛みが残ってしまった場合、このような後遺症について「後遺障害」と認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった損害賠償を交通事故の相手方に請求できます。
「後遺障害を負う」ということはその後の人生に多大な影響を与えるため、後遺障害の認定を受け賠償金を受け取ることは被害者にとって重要になります。
ただし、首の痛みというのは、後遺障害が認められるのが難しい症状だといわれています。今回は、首の痛みについてどのような後遺障害が認められる可能性があるのか、詳しく解説していきます。
Contents
首が痛いだけでは後遺障害とは認められない
交通事故に遭ってケガをし、治療を受けたにも関わらず、首に痛みが残ることがあります。ですが、ただ単に「首が痛い」というだけでは必ずしも「後遺障害」と認められるわけではありません。
そもそも、後遺障害とは?
交通事故でケガをすると、治療をしてもケガをした部分に痛みやしびれなどの後遺症が残ってしまうことがあります。この後遺症について「後遺障害等級」が認定されると「後遺障害」となります。
後遺障害と認められるには検査が必要
交通事故により残ってしまった首の症状について、後遺障害等級認定を受けるためには、自覚症状があるだけではなく、医療機関で継続した診察・治療や検査を受ける必要があります。医療機関で受けられる検査は以下のものがあります。
<画像検査>
・レントゲン
・MRI・CT
<神経学的検査>
・スパーリングテスト
・ジャクソンテスト
・徒手筋力テスト
・深腱部反射テスト など
検査は事故後早い段階で受けましょう。
もっとも、首の痛みの症状は必ずしもレントゲンやMRIといった画像検査で症状を裏付ける他覚所見がはっきり認められるものではないため、後遺障害等級が認定されにくい症状でもあります。
そのため、医師と相談しながら、画像検査だけでなく神経学的検査も受けるとともに、自覚症状についても、医師に詳しく説明して診断書やカルテに記載してもらうことが大切です。
首の痛みの原因と関係のある傷病
交通事故によって首を受傷すると、どのような傷病になるのでしょうか。以下で代表的な傷病について説明します。
むちうち
交通事故によって首を受傷した場合の代表的な傷病は「むちうち」でしょう。
■むちうちとは
交通事故の強い衝撃で頭や首がむちをうつように激しく揺さぶられると、頭を支える首にかなりの負担がかかり、首が負傷した状態のことをいいます。
■むちうちの診断名
むちうちとは正式な傷病名ではありません。
医療機関では「頚椎捻挫」「頚部挫傷」「外傷性頚部症候群」など、症状や程度によって診断名がつけられます。これらを総称して、一般的にむちうちと呼ばれています。
■主な症状
主な症状は首の痛みや首の可動域制限、手のしびれなどです。そのほかにも頭痛やめまい、倦怠感、不眠、吐き気など人によってあらわれる症状は様々です。事故直後から症状があらわれる場合もあれば、数日後に症状があらわれる場合もあります。
脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症は脳脊髄液(髄液)が漏れ出て「減少状態」となることにより頭痛をはじめ、首の痛みなどさまざまな症状があらわれる病気です。
■脳脊髄液減少症の原因
脳脊髄液減少症は、交通事故やスポーツ外傷、落下事故等による頭部や全身への強い衝撃が原因といわれています。
■主な症状
典型的な症状は起立性頭痛です。起立性頭痛とは、立ち上がって数分~数十分経つと強い頭痛があらわれ横になると頭痛がやわらぐ、というものです。そのほか、めまいや首の痛み、嘔吐や耳鳴り、倦怠感などさまざまな症状があります。
脳脊髄液減少症の診断には医療機関での詳しい検査が必要です。少しでも交通事故の外傷によって脳脊髄液減少症が疑われる場合は、検査を受けましょう。
交通事故後に首が痛い(首の痛みが続く)ときにやるべきこと
すぐに医療機関を受診すること
事故直後に自覚症状がなくても、数日後に首の痛みが出てきた、というはよくあることです。「我慢できる痛みだから」「仕事を休めないから」といって病院に行かないと、後に症状が残っても後遺障害等級が認定されない可能性が高くなります。
適切な治療を受けること
一般的なむちうちの治療では症状に応じて消炎鎮痛剤の服用や湿布、筋弛緩薬などによって痛みの緩和を図ります。保存療法として、痛みの症状が強い場合は頚椎カラー(首の固定装具)を使って首を固定し、日常生活で安静にします。
首が痛い場合にやってはいけないこと
首が痛いとき、つい首を左右に動かしてぽきりと鳴らしたくなってしまうかもしれませんが、首へ大きな負担となります。不必要に動かすことは避けましょう。
また、首に痛みがあるにも関わらず、無理な姿勢で長時間の仕事をしたり、激しい運動などをしたりして悪化させることがないよう、くれぐれも無理せずに安静にして過ごしましょう。
首の痛みと交通事故の因果関係が認められた裁判例
ここで、首の痛みと交通事故の因果関係が認められた裁判例をご紹介いたします。
【平成21年11月13日 名古屋地方裁判所判決】
<概要>
停止していた被害者の車に脇見運転をしていた加害者の車が追突した交通事故。被害者は交通事故により頚部捻挫、むち打ち症、頚椎挫傷、腰椎挫傷、頭痛症、外傷性脊髄液減少症(の疑い)、外傷後抑うつ症、外傷後性機能障害(インポテンツ)の傷害を受けた。
<判決>
被害者が主張した後遺障害のうち、交通事故と相当因果関係が認められたのは一部だったたが、事故により頚部捻挫、頚椎挫傷等の傷害を負い、頭痛、頚部痛などの「局部に頑固な神経症状を残すもの」として後遺障害等級12級13号が認定され、
・後遺障害慰謝料:290万円
・後遺障害逸失利益:648万6228円
との判決が下された。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故後の首の痛みにお困りなら弁護士にご相談ください
首の痛みについてどのような後遺障害が認められる可能性があるのか、ご理解いただけましたか? 首の痛みは、骨折や靱帯断裂のような他覚的所見が認められにくいため、必ずしも後遺障害等級認定が受けられるわけではありません。
そのため、後遺障害等級認定申請をお考えの場合は弁護士への相談をおすすめします。
弁護士法人ALGの弁護士であれば法律の知識だけではなく、後遺障害等級認定について熟知しています。
医師の診断や被害者の症状をもとに後遺障害等級認定の申請段階からサポートさせていただきます。
さらに過去の裁判例から、後遺障害についてのアドバイスもできますので、首の痛みでお悩みの場合はお気軽にご相談ください。
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保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)