監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士
交通事故の慰謝料がどのように決められているかご存じですか? 事故に遭った被害者の精神的苦痛は慰謝料として加害者に請求できます。精神的苦痛とはケガの痛みや苦しみなど精神的なダメージのことです。精神的・心理的に受ける損害なので目に見えない損害になります。
目に見えない損害である慰謝料には、相場を決める基準があります。中でも重要なのが弁護士基準といわれる基準です。慰謝料は弁護士基準で算定すると一番高額になり、正しい相場とされています。
今回は弁護士基準とはなにか、慰謝料の種類や相場、増額交渉について解説します。
Contents
弁護士基準とは
「弁護士基準」とは交通事故の事案で裁判所や弁護士が損害賠償額を計算するときに使う算定基準で、過去の裁判例をもとに作られたものです。
弁護士基準は、交通事故の損害賠償額を裁判で争うことになったとき、裁判所が公平な立場から適正な損害賠償額を判断するために用いる基準でもあり、裁判基準ともよばれています。そのため、弁護士基準で算定されたものが適正な金額、正しい相場であるとされています。
損害賠償額を算定する基準には弁護士基準のほかに「自賠責基準」と「任意保険基準」があります。自賠責基準は被害者にとって必要最低限の補償であるため金額が十分ではありません。
また、任意保険基準は任意保険独自で決めている基準です。自賠責基準と同等か若干高い程度です。基本的に加害者有利になっていることが多く、被害者にとって妥当な金額とはいえません。
弁護士基準の入通院慰謝料相場は2種類ある
交通事故でケガをして入通院をしたことによる精神的苦痛に対して入通院慰謝料を請求できます。弁護士基準の入通院慰謝料は下記の算定表をもとに算出します。
算定表はケガの程度に応じて「通常のケガの場合」と「比較的軽傷の場合」があり、相場が異なります。
表の見方ですが、横をみると入院した月数、縦をみると通院した月数になっています。「1月」は30日単位と設定されていて、入院と通院の日数が交わるところが入通院慰謝料です。被害者の入通院期間に応じた金額が設定されています。
通常のケガの場合
別表Ⅰ「通常のケガの場合」で実際の入通院慰謝料の算定方法を解説します。
例:入院期間1ヶ月、通院期間4ヶ月、実通院日数60日の場合
入院期間は「1月」、通院期間は「4月」、2つの交わるところは「130万円」なので、入通院慰謝料は130万円になります。
ここで、通院期間は4ヶ月だけど、実際に通院した日数(実通院日数)は60日だから「通院期間」を「実通院日数」である「2月」でみなくてもいいの? と疑問に思う方もいるかもしれません。
実通院日数に関しては、あまりにも少ない場合は別ですが、弁護士基準の入通院慰謝料は実際に入通院した「日数」ではなく、入通院「期間」で算定します。任意保険基準では、実通院日数で慰謝料を計算している場合もあるので、弁護士基準よりも低い入通院慰謝料を提示される可能性があります。
他覚所見のないむちうちなど、比較的軽傷の場合
別表Ⅱ「比較的軽症の場合」とは別表Ⅰよりも軽症の場合に使われます。他覚所見のないむちうちや軽い打撲、擦り傷などが「比較的軽症の場合」にあたります。軽症のため入通院慰謝料は別表Ⅰより低い金額になります。上記と同じ例で解説します。
例:入院期間1ヶ月、通院期間4ヶ月、実通院日数60日の場合
入院期間は「1月」、通院期間は「4月」、二つの交わるところは「95万円」なので、入通院慰謝料は95万円になります。
今回は、別表Ⅰや別表Ⅱともに被害者の過失割合を「0」として計算しています。実際の事案では、交通事故の落ち度が被害者にあると過失が認められる場合もあります。そういった場合、別表Ⅰや別表Ⅱの慰謝料から、被害者の過失分が減額される可能性もあります。表にある金額を必ず受け取れるわけではないので、あくまでも目安として参考にしてください。
弁護士基準の後遺障害慰謝料
弁護士基準の後遺障害慰謝料は後遺障害等級認定手続きで認定された後遺障害等級によって金額が決まっています。後遺障害慰謝料は交通事故のゲガによって何かしらの後遺症が残り、後遺障害等級認定を受けると請求できます。
等級に応じた慰謝料は下記の表をご覧ください。後遺障害が重いほど慰謝料は高額になります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
弁護士基準では、一番下の後遺障害等級14級の後遺障害慰謝料は110万円です。自賠責基準でも自賠法にもとづく後遺障害慰謝料が定められており、同じ14級は32万円です。
後遺障害の程度は同じにも関わらず、算定基準が違うだけで3倍以上の差が生じます。
弁護士基準の死亡慰謝料
亡くなった被害者の属性 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他(独身の男女、子供、幼児など) | 2000万~2500万円 |
弁護士基準の死亡慰謝料は上記のように、亡くなった被害者の属性によって相場が決まっています。属性とは、被害者が家計を支える大黒柱なのか、子供なのか、独身なのか、など家庭内での立場のようなものです。
また、死亡慰謝料は亡くなった被害者本人とその遺族に対して支払われます。弁護士基準では、遺族分の死亡慰謝料も上記の金額に含まれています。
亡くなった被害者が「一家の支柱」であった場合には、2800万円が死亡慰謝料として支払われます。一家の支柱とは、被害者の世帯が主に被害者の収入によって生計を立てている場合のことをいいます。
ちなみに、自賠責基準での被害者本人の死亡慰謝料は一律400万円です。被害者本人とは別に遺族の慰謝料もありますが、被害者の家庭内での立場などが考慮されているわけではないので、弁護士基準と比べて金額が低いです。
自力で弁護士基準による交渉をするのは難しい
交通事故の慰謝料は加害者の任意保険会社と示談交渉で決まることが多いです。示談交渉において任意保険会社は、任意保険基準で算定した慰謝料額を被害者に提示します。
そのため、被害者が弁護士基準の慰謝料を請求する場合は、示談で増額交渉をする必要があります。ですが、被害者本人が示談交渉で「提示された金額は任意保険の基準ですよね?
本来は弁護士基準が適正な相場なので慰謝料を増額してください」と主張しても、一般的に任意保険会社がそれに応じてくれることはほとんどありません。
被害者自身が弁護士基準による交渉をするのは容易ではないのです。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士基準の慰謝料請求はお任せください
弁護士基準で慰謝料を請求したい場合は、ぜひ弁護士にご相談ください
弁護士であれば、示談交渉でも弁護士基準によって算定した慰謝料を請求できます。
任意保険会社も、弁護士が相手の場合、示談交渉では話し合いがまとまらなければ、裁判になる可能性が高く、時間と費用がかかること、裁判では弁護士基準が使われることなどから、弁護士基準に応じる可能性がぐんと高まります。
交通事故事案の経験豊富な弁護士の多い弁護士法人ALGなら、「弁護士基準の慰謝料を請求したい!」という被害者の方を十分にサポートできます。まずは相談からでもかまいませんので、お気軽にご連絡ください。
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保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)