労務

普通解雇を適法に行うためには?4つの要件や必要な対応と手続き

広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛

監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士

  • 解雇

会社から解雇されると労働者は生活の糧を失うことから、会社からなされた解雇の処分をめぐって裁判に発展するケースは珍しくありません。裁判所も労働者の解雇については厳格に判断する傾向にあります。それでは、適法に普通解雇を行うために必要な要件や手続き等を見ていきましょう。

普通解雇とは

会社側からする雇用契約の解約の申し入れを普通解雇といいます。
期間の定めのない雇用契約はいつでも解約の申し入れをすることができますが(民法627条1項)、労働者保護の観点から、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利濫用として無効となります(労働契約法16条)。

普通解雇事由の具体例

普通解雇事由としては、病気等による労務提供の不能や勤務成績不良、勤務態度不良、非違行為、会社の経営難などがあります。

普通解雇と懲戒解雇の違い

懲戒解雇は、懲戒処分としてなされる解雇のことをいいます。どちらも会社による一方的な労働契約の解消という点は同じですが、懲戒解雇は、企業秩序に違反したことに対する制裁として契約を解消するという点が異なります。

整理解雇も普通解雇の一種

会社が経営上の必要性から人員削減を行うためにする解雇を整理解雇といいます。会社側の事情に起因する解雇であることから、その有効性の判断は普通解雇より厳格に行われますが、整理解雇も普通解雇の一種と整理できます。

普通解雇を適法に行うための4つの要件

解雇は労働者の生活に重大な影響を及ぼすことから、法律上、様々な制約が課されています。それでは、普通解雇を適法に行うための要件を見ていきましょう。

①就業規則に定める解雇事由に該当する

就業規則には、通常、解雇事由を定めた規定が置かれています(労基法89条3号)。就業規則の解雇事由に列挙されていない事由に基づいて解雇できるかについては裁判例も分かれていますが、多くの場合、「その他前記各号に準ずる事由」といった包括的な規定が置かれるため、列挙されている解雇事由そのものに当たらない場合は、そのような包括規定に該当するとして解雇することになります。

②解雇事由が客観的に合理的であり、社会通念上相当である

解雇は、①客観的に合理的な理由があり、②社会通念上相当でなければ権利濫用として無効となります(労働契約法16条)。

解雇の客観的合理な理由とは、労働者の労務提供不能・労働能力や適格性の欠如、規律違反行為の存在、経営上の必要性などの事情が存在することをいいます。②社会通念上相当であるとは、それらの事情の内容・程度、ほかの労働者との処分の均衡、解雇手続の履践など、労働者の雇用喪失という不利益に相応する事情が存在することをいいます。

③解雇予告または解雇予告手当の支払いをしている

少なくとも30日前に労働者に予告するか、30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払うか、予告期間の日数と予告手当の日数を合計して30日以上とする(例えば、10日前の予告と20日分の予告手当)ようにしなければなりません(労基法20条1項本文、2項)。

④法令上の解雇制限に違反しない

労働者が業務上の負傷や疾病による療養のために休業する期間及びその後30日間、産前産後休業の期間及びその後30日間は、労働者を解雇できません(労基法19条1項)。

また、性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法6条)や女性の婚姻・妊娠・出産等を理由とする解雇(同法9条)、組合所属・正当な組合活動等を理由とする解雇(労組法7条)等、差別的な取り扱いによる解雇も禁止されています。

普通解雇が不当とみなされるケースとは?

解雇が労働者の生活に深刻な影響を与えることから、裁判所は簡単には解雇を認めない傾向にあります。それでは、普通解雇が不当とみなされた裁判例を見ていきましょう。

普通解雇が無効と判断された裁判例

能力不足を理由としてなされた解雇が無効と判断された事案として、セガ・エンタープライゼス事件(東京地決平成11年10月5日)があります。

事件の概要

本件は、会社が、人事考課の順位が下位10パーセント未満で、所属部署から次々と異動を命じられてきた労働者に対し、与える仕事がないとして退職勧奨をしたが、労働者がそれを受け入れなかったため、就業規則の「労働能率が劣り、向上の見込みがない」という解雇事由に当たるとして労働者を解雇したところ、労働者が解雇の無効等を争った事案です。

裁判所の判断

本決定は、労働者の能力不足による解雇について、就業規則の解雇事由の解釈を、ほかの解雇事由との権衡を考慮して限定的に行うべきとし、ほかの解雇事由との権衡からすると、「労働能率が劣」るとは、「著しく」劣る場合でなければならず、相対評価による考課順位だけから判断してはならないし、体系的な教育や指導によって、労働能率の向上を図る余地があれば、「向上の見込みがない」に該当しないと述べて、本件の労働者は、「労働能率が劣り、向上の見込みがない」とはいえないとして、解雇は無効であると判断しました。

ポイント・解説

職種の限定のない正社員の場合、労働者として求められる能力は、会社が教育訓練等により習得させることが想定されています。そのため、会社は、当該労働者が特定の職種で能力がないと判断しても、教育訓練等によって雇用関係を維持するための努力をすることが求められ、そのような努力を怠って解雇した場合、解雇が無効と判断される可能性があります。

普通解雇が無効となった場合に会社が負うリスク

解雇が無効となった場合、会社は、解雇期間中の賃金を労働者に支払わなければなりません(民法536条2項)。解雇無効の裁判は1年以上かかることも多いですから、その分、敗訴した場合に支払う金額も増えることになります。

普通解雇を適法に行うために必要な対応・手続き

解雇は労使間のトラブルの中でも問題となりやすいものです。それでは、上記のようなリスクを減らすため、解雇を適法に行うために必要な対応や手続きを見ていきましょう。

普通解雇に至るまでの対応

労働者保護の観点から、使用者側としてはできる限りの解雇回避の努力が要求されますから、何かあったときに即解雇というのは難しい場合もあります。そのため、解雇に至るまで、段階を踏んで対応していくことが求められます。

注意指導の実施

例えば、勤務成績不良の場合は、どのような指導・教育を行ったのか、それに対する労働者の態度はどうだったのか、それにより業績の改善は見られたのか等を記録しながら、注意指導を実施していきます。注意指導は口頭でも可能ですが、会社が労働者に対していかなる措置を施してきたのかを明らかにするためにも書面によることが望ましいです。

退職勧奨の検討

退職勧奨とは、会社による合意解約の申し込みに対する承諾を勧める行為をいいます。労働者との合意による解決を目指すものであり、労働者が退職に応じるかは任意ですが、訴訟のコストや敗訴のリスクを小さくするというメリットがあります。

普通解雇を行う際の手続き

最後に、普通解雇を行う際の手続面で注意すべき点を見ていきましょう。

解雇理由証明書の交付

労働者を解雇する際、労働者が、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、解雇事由について証明書を請求した場合には、会社は遅滞なくこれを交付しなければなりません(労基法22条1項)。

金品の返還

会社は、本人等から請求があった場合には、7日以内に賃金等、労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません(労基法23条1項)。もっとも、退職金については、就業規則で定められている支払期日までに支払えば足りることとされています。

離職票の作成

会社は、労働者が退職した場合には、資格喪失届に離職証明書を添えて、労働者が離職した翌々日から10日以内にハローワークに提出しなければなりません。

普通解雇を検討する場合は、労務の専門家である弁護士にご相談下さい。

解雇は、労働者の職を奪うものであるため、労使間の紛争に発展しやすいものといえます。対応を誤れば、解雇をしたと思ったのにできていないことになり、さらに、労務提供を受けていないのに賃金は支払わなければならない事態にもなります。

解雇事由の有無やその妥当性、手続き等については、早期に、専門家である弁護士に相談することが望ましいと思われますので、ぜひ、弁護士法人ALG&Associates広島法律事務所にご相談ください。

関連記事
広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛
監修:弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長
保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)
広島県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

来所・zoom相談初回1時間無料

企業側人事労務に関するご相談

  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
  • ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

顧問契約をご検討されている方は弁護士法人ALGにお任せください

※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

ご相談受付ダイヤル

0120-406-029

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

メール相談受付

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません