不貞慰謝料とは 慰謝料相場と請求方法

離婚問題

不貞慰謝料とは 慰謝料相場と請求方法

広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛

監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士

配偶者の不貞が発覚した場合、「慰謝料を沢山とらないと気が済まない!」と思うのは当然のことです。また、相手から不貞による慰謝料を請求され、どう対応すべきか困っている方もいらっしゃるでしょう。

ここでは、不貞慰謝料の内容や請求方法、請求された場合の対処方法などについて、ご説明しますので、不貞慰謝料について悩まれている方は、ぜひ参考になさってください。

不貞慰謝料とは

婚姻中にもかかわらず、配偶者以外の者と、肉体関係を結ぶことを、「不貞」といいます。
肉体関係があったかどうかが問われるため、2人きりで食事をしたり、出かけたり、手をつないだりするだけでは、基本的には、不貞にはあたりません。

不貞行為は民法上の不法行為(709条)にあたるため、配偶者または不貞相手に対し、不貞行為により受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる可能性があります。これを不貞慰謝料といいます。

ただし、慰謝料請求が認められるためには、不貞相手が婚姻中であることを知っていたこと、または、知らなかったことについて過失があること、さらに、不貞行為があった時に婚姻関係が破綻していないことなどの条件が必要になります。

不貞慰謝料と離婚慰謝料の違い

離婚慰謝料とは、配偶者の有責行為(不貞、DV、モラハラなど)が原因となって離婚した場合に受けた精神的苦痛への補償のことをいいます。
一方、不貞慰謝料とは、配偶者が配偶者以外の第三者と不貞行為を行った場合に受けた精神的苦痛への補償をいい、配偶者だけでなく、不貞相手に対しても請求することが可能です。

また、不貞慰謝料は、離婚せずに婚姻関係を継続した場合であっても、請求可能です。
一方の不貞行為により離婚することになった場合、実務上では、2つの慰謝料を区別せず、1つの慰謝料として計算し、請求することが一般的となっています。

なお、不貞慰謝料の請求には時効があり、「配偶者の不貞行為及び不貞相手の氏名や住所などを知った時から3年以内」であり、かつ「配偶者の不貞行為があった時から20年以内」であれば慰謝料を請求できますが、それを過ぎると時効が成立し、基本的には、それ以降の請求は認められていませんので、注意が必要です。

例えば、相手が不貞行為をしてから10年後に、不貞行為を知った場合でも、不貞行為を知ってから3年以内であれば、慰謝料を請求することが可能です。
しかし、不貞行為から20年以上経った後に、不貞行為を知った場合は、20年を過ぎているので、基本的には、慰謝料は請求できないということになります。

不貞行為に対する慰謝料の相場

不貞慰謝料の相場は50万円~300万円とされており、「不貞をされたが、結局、離婚はしなかった」という場合でも、不貞慰謝料を請求することが可能です。

以下の表から、不貞慰謝料の相場は、離婚した場合の方が高額になることが確認できます。
また、離婚をしなかった場合は、別居の有り無しにより相場が異なり、別居をした場合の方が高額になります。

不貞慰謝料の相場

離婚の有無 慰謝料の相場
離婚も別居もしなかった場合 50万~100万円
離婚しなかったけど別居した場合 100万~200万円
離婚した場合 200万~300万円

不貞慰謝料額の判断基準

不貞慰謝料の相場表はあくまで目安であり、一般的には、以下のような個別事情を考慮し、具体的な金額を算出することになります。

  • 夫婦の婚姻期間の長さや子供の有無・人数・年齢
  • 不貞発覚時の夫婦関係の状況(婚姻関係が破綻していなかったか否か等)
  • 自身の落ち度(自分自身も過去に不貞をしていた等)
  • 不貞行為の期間や回数、悪質性
  • 不貞相手との子供の有り無し
  • 不貞行為に対する反省、謝罪、社会的制裁
  • 不貞相手や夫婦の収入など
  • 相手の不貞行為によりうつ病などになっていないか
  • 発覚後の不貞行為の継続の有無

など

不貞慰謝料を請求したい方

不貞慰謝料は誰に請求できる?

不貞慰謝料は、配偶者と不貞相手が連帯して支払う義務を負うため、2人がそれぞれ全額の慰謝料支払い義務を負います。
不貞慰謝料の請求先は、「配偶者のみ」「不貞相手のみ」「配偶者と不貞相手双方」の3つが挙げられ、どれを選ぶかは請求者の自由です。

不貞慰謝料を請求する前に確認すべきこと

不貞慰謝料を請求する前に、以下のことを確認しておきましょう。
特に、慰謝料を請求するためには、不貞の証拠が必要不可欠となるため、日ごろから集めて おくことが必要です。
また、慰謝料の計算方法がわからない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

  • 慰謝料請求の時効が成立していないか
  • 相手の不貞行為を証明する証拠(メールやSNSのやりとり、写真、動画、レシートやカードの明細など)があるか
  • 相手に請求する慰謝料金額は相場からかけ離れていないか
  • 請求方法は適切か

証拠になるもの

不貞慰謝料を請求するためには、相手の不貞行為を証拠によって証明する必要があります。
そのため、以下のような証拠を集めることが必要となります。証拠は一つだけではなく複数あると、より相手の不貞行為を証明するのに有利になります。

写真・動画
ラブホテルなどに2人で出入りする写真は有力な証拠となるでしょう。
一方、ビジネスホテルに2人で出入りする写真や動画は、ビジネスホテルが仕事で使われることもあるため、相手が「不貞をしていない」といえば、不貞の証拠としては弱くなります。

メール・SNS
肉体関係があったと推認できる、配偶者と不貞相手とのメールやSNSでのメッセージのやり取りも、有効な証拠となります。例えば、性行為の感想やラブホテルに行った話などが書かれていれば有効ですし、そのメール画面は写真などに残しておきましょう。

領収書
例えば、2人分のホテルや旅館の宿泊領収書、異性への高価なプレゼントと推測される領収書、またはそれらのクレジットカードの明細書などが不貞行為の証拠となる場合があります。
特に、ラブホテル利用の領収書は不貞の有力な証拠となります。

不貞慰謝料を請求する方法

不貞相手や配偶者に慰謝料を請求する場合は、メールや電話で連絡し請求する方法、内容証明郵便で慰謝料請求書などの書面を送る方法、弁護士などの代理人を通じて交渉する方法があります。どの方法を選ぶかは、ご自身の負担などを考慮し、請求者側で判断します。

当事者間の話し合いがまとまったら、合意書などを作成し、できれば法的拘束力のある強制執行認諾文言付公正証書にしておくと安心です。
相手が慰謝料の支払いを拒んだり、減額を求めたりして、争いが生じた場合は、裁判所に調停の申立てを行います。

調停では、調停委員が間に入り、当事者間の意見の調整を行い、合意による解決を目指します。調停でも解決しない場合は、訴訟へと進み、裁判所の判断にゆだねることになります。

内容証明郵便での請求について

配偶者との別居などで直接会うことが難しい場合は、基本的には、メールや電話、内容証明郵便などにより、慰謝料を請求することになります。

この内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の書面を送ったかを、郵便局が証明する文書のことをいいます。

内容証明郵便のメリットは、送った日時や内容が公的に記録されるため、慰謝料請求をした事実を証拠として残すことが可能であるという点があります。さらに、内容証明を相手に送ることで、不貞行為に対して責任をとってもらうという意思を伝え、心理的プレッシャーを与えられるという点が挙げられます。

一方、内容証明のデメリットとして、文書を作成する手間と、それなりの手数料がかかること、相手に慰謝料の支払いを強制する法的拘束力は持ち合わせていないという点がありますので、注意が必要です。

内容証明郵便に記載する内容

内容証明郵便に記載する内容は、主に以下のとおりです。
なお、内容証明には文字数や行数などの規定があり、規定通りに書かないと、郵便局で受付けてもらえませんので、注意が必要です。

  • 不貞行為の事実(いつ、どこで、誰と不貞行為を行ったのか)
  • 不貞行為の違法性(民法709条違反)
  • 慰謝料を請求すること
  • 慰謝料の請求金額、支払方法、支払期日、振込先など
  • 慰謝料が期限内に支払われなかった場合の法的措置

離婚後でも慰謝料請求は可能?

離婚後に婚姻期間中の不貞が発覚し、慰謝料を請求したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

離婚後であっても、時効が成立していない限り、不貞慰謝料を請求することが可能です。しかし、不貞行為とは全く別の理由で婚姻関係がすでに破綻していて離婚に至ったような場合には慰謝料が認められない、または減額される可能性があります。

なお、離婚時に協議書などを作成し、「離婚後はお互いにこれ以上の金額の請求はしない」旨の清算条項を設けるなどして、慰謝料の請求権を放棄している場合は、慰謝料の請求が困難になります。ただし、離婚時に全く不貞の事実を知らなかった場合には、例外的に請求できる場合もあります。

相手が慰謝料を支払わないときの対処法

当事者間の話し合いや調停などにより、慰謝料の支払いを合意したにもかかわらず(ただし、話し合いによる合意の場合は強制執行認諾文言付公正証書によること)、相手から支払われない場合は、強制執行により慰謝料を回収することが可能です。

差し押さえの対象として以下のものなどが挙げられます。

  • 相手の給与や預貯金
  • 自動車
  • 不動産

不貞慰謝料を請求されている方

慰謝料を請求されたらまず確認すること

相手から不貞慰謝料を請求されたら、突然のことでパニックになってしまうかもしれませんが、まずは冷静になって、以下の点を確認し、慰謝料請求が適切なものであるのかどうか検討しましょう。

  • 誰から請求されているのか(請求者本人からなのか、代理人弁護士からなのか)
  • 相手が主張する事実関係に誤りはないか、証拠はあるのか
  • 不貞相手が既婚者であることを知っていたか(慰謝料請求の相手が不貞相手の場合)
  • 自らの意思で不貞行為を行ったのか、不貞行為は強要されたものか
  • 時効が成立していないか
  • 不貞発覚時、夫婦関係はすでに破綻していなかったか
  • 相場より高額な慰謝料を請求されていないか

内容証明郵便で請求された場合の対処法

内容証明郵便を受け取ることはめったにあることではありません。封筒に「内容証明郵便」と赤いハンコが押され、文書の最後に郵便局の証明印が押されているのを見て、すぐにでも慰謝料を振り込まなければと焦ってしまうかもしれませんが、まずは冷静になり、適切な対処方法をとることが大切です。

そこで、以下では、内容証明郵便で慰謝料を請求された場合の対処法について、ご説明します。

回答書を送付する

内容証明郵便を受け取ったら、合意、反論、減額の希望など請求に対するご自身の主張を記載した回答書を、相手方に送付します。
この際、必ずしも内容証明郵便で返送する必要はありませんが、回答書は重要な証拠となるため、よく吟味して作成すべきでしょう。

内容証明を無視することは避けるべき

内容証明郵便には法的拘束力がないため、回答期日や支払期日が過ぎても差し押さえを受ける等の不利益を被ることはありません。しかし、回答書を送らないと交渉する気がないと判断されて調停を申し立てられる可能性があります。回答書は期限内に返送しましょう。

代理人を通して請求されたら

弁護士が相手の代理人となっている場合、交渉相手は相手本人ではなく、弁護士になり、高額な慰謝料を請求するケースが多くなっています。これにご自身一人で立ち向かうことは難しいため、できれば、こちらも弁護士に依頼し、代理人として相手と交渉してもらうことが望ましいでしょう。

なお、相手が行政書士に依頼し、内容証明などの文書を送ってきた場合、行政書士は文書作成のみ認められる専門家であり、示談交渉や調停・裁判をする権利がないため、交渉相手は行政書士ではなく、相手本人になります。

行政書士に依頼した相手は、なるべく裁判は起こさず、当事者間での解決を希望していることが想定されます。そのため、お互いが争いなく合意すれば、穏便に解決する可能性が高いといえます。

請求された慰謝料を減額するには

慰謝料を減額する方法

相手から慰謝料を請求された場合、その全額を支払わなければいけないというわけではありません。あくまで相手の希望金額であるため、高額な慰謝料を請求された場合は、減額交渉を検討したり、弁護士に相談したりすると良いでしょう。金額に合意ができなければ、調停、訴訟手続きへ進むことになります。

慰謝料が減額されやすいケース

以下のようなケースの場合は、慰謝料の減額が認められやすいとされています。
ご自身のケースがいずれかにあてはまるなら、減額交渉を検討しましょう。

  • 相場以上の高額な慰謝料金額を請求された
  • 支払う側の収入や財産が少ない
  • 不貞行為の期間や回数が少ない
  • 不貞行為に消極的だった(上司からむりやり迫られ断れなかったなど)
  • 不貞発覚後、不貞をやめた
  • 不貞行為を謝罪し、反省している
  • 不貞発覚後に離婚していない

合意後、慰謝料を支払わないとどうなる?

慰謝料について合意したにもかかわらず、慰謝料を支払わないでいると、相手から強制手段をとられる可能性があります。

合意内容が強制執行認諾文言付公正証書、調停調書、和解調書、判決正本などの公的文書(債務名義)に記載されている場合は、強制執行により、ご自身の給与や預貯金、自動車、自宅などの財産が差し押さえられるおそれがあります。

上記文書には法的拘束力があり、裁判を省いて、直ちに強制執行をかけることができるため、注意が必要です。

また、公的文書がない場合でも、相手方より慰謝料請求調停または訴訟を起こされる可能性があります。もし、ご自身に支払い能力がない場合は、慰謝料を減額してもらったり、一括での支払いが困難であれば、分割払いをお願いしたり、相手方に交渉する必要があります。

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不貞慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう

不貞慰謝料の交渉は、当事者同士だと感情的になるため、話し合いが進みにくいのが一般的です。 また、「慰謝料請求をしたくても適正な請求金額が分からない」、「どんな証拠を集めたら良いのか分からない」などとお困りの方も多いと思います。

このように、不貞慰謝料に関してお困りの方は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士法人ALGは、不貞慰謝料請求について豊富な相談実績を有します。経験に基づいた知識やノウハウを駆使し、慰謝料の交渉に臨むことが可能です。不貞慰謝料ついてお悩みの方は、ぜひ弁護士法人ALGにご相談ください。

広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛
監修:弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長
保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)
広島県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。