監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士
交通事故によって子供が怪我をしたり、家族が大きな怪我を負ったりした場合、入退院や通勤通学に付き添うこともあるかもしれません。
しかし、付き添いには交通費も発生しますし、ご自身が仕事をしていれば仕事にも影響を及ぼすこともあります。
では、家族の付き添いでかかった費用は補償されるのでしょうか。
この記事では、交通事故の被害者の付き添いについて詳しく解説していきます。ぜひご参考ください。
Contents
付添費とは
付添費とは、事故により怪我を負った被害者の看護や介助にかかる負担を補償するために支払われるものです。
例えば、交通事故により子供が怪我を負って身の回りのことができなかったり、被害者の怪我の程度が重く入院して、家族が付き添い、看護・介助した場合に「付添費」が発生することがあります。
なお、付添費は本来付き添いをした人への補償ですが、基本的には、被害者本人の損害として計上されます。
付添費が認められる条件
付き添いをしても、必ず付添費が認められるわけではありません。
交通事故の付添費が認められる条件として、主に以下のようなものがあります。
- ① 医師から付き添いが必要と診断を受ける
医師が付き添いの必要性を認めていれば付添費が認められるでしょう。診断書やカルテに「付き添いが必要」との記載があれば、医師から指示があった証明になります。 - ② 怪我の程度が重大である
医師から付き添いの指示がなかったとしても、被害者の怪我が重傷である場合は、付添費が認められる可能性が高いでしょう。 - ③ 被害者が子供や高齢者である
被害者が子供や高齢者の場合は、怪我の程度に関係なく付添費が認められることが多いでしょう。
子供に付き添う場合は条件が緩和されている
交通事故の被害者が幼児や児童などの子供であれば、1人で入通院するのも難しいですし、親も心配になるでしょう。そのため、怪我の程度や医師の指示に関係なく付添費が認められることが多いです。
ただし、中学生以上になれば、1人で通院することができるでしょうし、身の回りのことも問題なくできると考えられているため、医師の指示がなければ、特別な事情がない限りは付添費が認められないケースが多いです。
子供の付添費の目安としては12歳以下であれば認められやすいでしょう。
※自賠責保険では、原則12歳以下と明示されています
付添費の内訳と相場
付添費と一口にいっても、入院や通院付き添いのほか、自宅療養や通学の付き添いなど、いくつか種類があります。
これらの付き添いについて「付添費」が認められるためには、相応の条件が必要となります。
では、付添費の内訳と相場について見ていきましょう。
入院付添費
入院付添費とは、被害者の怪我が重傷で入院している場合に、看護や介護を行ったときに支払われるものです。「入院期間中の付き添い」として、病院での看護以外に身の回りの世話をした場合にも認められます。
そのため、短時間のお見舞いや着替えの補充といった程度では認められないでしょう。
また、入院期間中であっても、怪我が回復して看護や介護が必要なくなったと判断された場合は、それ以降の付添費は認めてもらえない可能性が高いです。
入院付添費の相場
入院付添費の相場は以下のとおりです。
- 自賠責基準:日額4200円(※)
- 弁護士基準:日額6500円
弁護士基準では、被害者が幼児・児童のケースや、怪我の程度が重いケースは、相場よりも高い金額が認められる場合があります。
(※)令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の日額4100円が適用されます。
通院付添費
通院付添費とは、被害者が1人で通院することが難しいときに、家族が通院に付き添った場合に認められるものです。
【通院付添費が認められる可能性の高い具体例】
- 被害者が幼児・高齢者のケース
- 被害者が脳に障害が残り1人では病院にたどり着けないケース
- 被害者が足を骨折して歩けないケース など
なお、通院付添費は、付き添いをしたこと自体に支払われるものであり、被害者や付添人の交通費は別に請求できます。
通院付添費の相場
通院付添費の相場は以下のとおりです。
- 自賠責基準:日額2100円(※)
- 弁護士基準:日額3300円
弁護士基準については、被害者の年齢や症状によって、3000~4000円の範囲で変動することがあります。
(※)令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の日額2050円が適用されます。
自宅付添費
自宅付添費とは、被害者が自宅療養する際に家族などが付き添った場合に請求できるものです。被害者の年齢や怪我の部位などが考慮され、自宅でも付添人が必要と認められた場合は付き添い費が認められます。
〈自宅付添費の注意点〉
自宅付添費の対象となるのは、事故が発生してから症状固定日(※)までの自宅療養期間に限られます。したがって、病院での入院期間や症状固定日以降の期間は対象外となります。
(※)症状固定日:これ以上治療を続けても症状が改善しないと医師が判断した日
自宅付添費の相場
自宅付添費の相場は以下のとおりです。
- 自賠責基準:日額2100円(※)
- 弁護士基準:明確な定めがなく、事案によって異なる
弁護士基準については、「付添人の負担の大きさ」によって、相場が異なります。そのため、日額3000円程度のケースもあれば、日額1万円を超えるケースもあります。
(※)令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の日額2050円が適用されます。
将来介護費
将来介護費は、症状固定後、将来にわたり介護が必要な場合に支払われるものです。そのため、被害者に重度の後遺障害が残っていることが前提となります。
〈将来介護費と後遺障害等級の関係〉
重度の後遺症が残り、要介護の後遺障害等級が認定された場合、基本的には将来介護費の請求が認められます。
また、介護を必要としない後遺障害等級でも、被害者の状況によっては将来介護費の請求が認められる場合があります。
将来介護費の相場
将来介護費は、介護が必要になる期間に応じた金額が一括で支払われるのが基本であり、具体的な金額は以下の式で求められます。
●将来介護費=介護費年額(日額×365日)×症状固定時の平均余命に応じたライプニッツ係数(※)
「介護費年額」は、付き添う人が誰かによって以下のように異なります。
- 家族などが付き添う場合:日額8000円
⇒認定された後遺障害等級によって増減する - 職業付添人を雇った場合:原則、実費全額 日額1万~3万円程度
(※)ライプニッツ係数:将来に発生する費用を前もって受け取ったことによる「利息」控除するための係数
通学付添費
通学付添費とは、子供が怪我を負い、その通学に両親などが付き添った場合に支払われます。怪我の部位や程度を考慮し、合理的な範囲内で請求が認められます。
【通学付添費が認められる可能性のある具体例】
- 車椅子に乗ったまま電車通学するケース
- 松葉杖をつきながら長期間歩いたりするケース など
また、被害者が子供の場合、通学付添費以外にも、以下の費用の請求が認められる可能性があります。
- 事故で学校を休んだ分の補習費用
- 家庭教師代
- 留年して余計にかかった授業料 など
通学付添費の相場
通学付添費の明確な相場はなく、事案ごとに個別に判断されます。
ここでは参考として、通学付添費が認められた過去の裁判例を紹介します。
以下の裁判例では、通学付添費として日額3000円が認められました。
【通学付添費を認めた裁判例(神戸地方裁判所 平成22年7月13日 判決)】
被害者は18歳の専門学生で、事故後1ヶ月間は腰など全身の痛みにより、1人で公共交通機関を使って通学することが困難であり被害者の母親が送迎を行った。
裁判所は母親の送迎に対して、日額3000円の通学付添費を認めた。
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仕事を休んで付き添いをした場合は付添看護費と休業損害を比較する
被害者の通院や看護などのために仕事を休まなければならない場合もあるでしょう。仕事を休んだことにより減収した場合には「休業損害」として相手方に補償を求めることができます。
ただし、「休業損害」と「付添費」はどちらか一方のみ請求でき、二重取りはできないので注意しましょう。
一般的には、休業損害と付添費を比較し、いずれか高い方が損害として認められます。
〈休業損害と付添費の注意点〉
休業による損害が職業付添人の雇用費を超える場合には、職業付添人の雇用費までしか認められない可能性があります。
この場合、自身が休むのではなく、職業付添人を雇うべきと判断されるためです。
プロに付き添ってもらった場合の付添費は実費精算
被害者の怪我が重い場合や、家族が仕事で忙しい場合には、看護師や介護士などの職業付添人に付き添いや介護を依頼することもできます。
職業付添人に依頼した場合、その付添費(雇用費)は、基本的には、実際にかかった費用をそのまま請求することが可能です。
ただし、職業付添人の費用は、その必要性と相当性がなければ請求は認められないでしょう。
そのため、依頼する際は、医師の指示があったことを看護証明書に記載してもらい、相手方保険会社にあらかじめ許可を得ておくようにしましょう。
交通事故の付き添いに関するQ&A
子供が通院を嫌がり暴れたため、夫婦で仕事を休んで付き添いました。付添費は二人分請求できますか?
基本的に、付添費として認められるのは1人分です。一般的な怪我の場合、1人付き添えば十分だと考えられているためです。
ただし、怪我が重く24時間体制での付き添いや、家族数人で見守り看護が必要なケースでは、数人分の付添費が認められることもあります。
子供の付添看護料は12歳以下しか支払われないと聞きましたが本当ですか?
状況次第では、12歳を超えていても付添費が認められる場合があります。
子供の付添費に関して、自賠責基準では、「原則12歳以下の子供を対象に、近親者が付き添った場合に認める」と明示されており、実務でもこれに倣うのが一般的です。
しかし、以下のような怪我の状況や、医師の指示があれば、子供が13歳以上でも付添費が認められることがあります。
・脳に障害があり、1人で身の回りのことをするのが難しい場合
・足を骨折しており、1人で公共交通機関に乗って通院が難しい場合
・12歳の頃から連続して入院し、入院中に13歳を迎えた場合 など
姉に子供の通院付き添いをお願いしました。通院付添費は支払われますか?
付き添いが認められるのは、近親者ですので、兄弟姉妹や祖父母などでも付添費の請求ができます。特に子供が幼い場合、1人で通院するのは難しいため、近親者の付き添いが必要です。
付き添ったのが子供にとって叔母であっても請求は認められるでしょう。
両親が入院している病院まで来てくれました。駆けつけ費用は請求できますか?
このケースでは、付き添いではなくお見舞いに当たるため、基本的には請求が認められるのは難しいでしょう。
しかし、以下のように被害者のケガの状況や家族の心情を考慮し、お見舞いが相当といえる場合は、駆けつけ費用が認められることもあります。
・被害者が危篤状態の場合
・家族の声かけによって症状が改善されると考えられる場合 など
交通事故の付き添いに関して、お困りでしたら弁護士にご相談ください
家族が交通事故の被害に遭われた場合、「付き添いたい」という思いは当然のことでしょう。
しかし、付添費を相手方に請求するためには、その付き添いの必要性や妥当性を証明しなければなりません。
ただでさえご家族が事故に遭い、心を痛めているときに相手方保険会社とやり取りをするのは、精神的負担が大きくなってしまうでしょう。
付添費については、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
弁護士に依頼することで、保険会社とのやり取りを任せられるため、ご家族の付き添いに専念することができます。また、弁護士が相手方保険会社に付き添いの必要性について主張することで、付添費が認められやすくなるでしょう。
私たちは交通事故に詳しい弁護士が多数在籍しております。交通事故のお悩みは、まずは一度私たちにお問い合わせください。

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保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)
