共同相続とは|トラブルを避けるために知っておくべきこと

相続問題

共同相続とは|トラブルを避けるために知っておくべきこと

広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛

監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士

亡くなった人(被相続人)の相続財産を相続する方法は、大きく3種類に分けられます。

  1. 遺言による方法(遺贈)
  2. 相続人全員で話し合う方法(遺産分割協議)
  3. 民法で定められた内容で行う方法(法定相続)

いずれの方法でも、原則、ひとつの相続財産を、ひとりの相続人が相続する「単独相続」が望ましいですが、状況によっては、ひとつの相続財産を、複数の相続人で相続する「共同相続」を選択するケースがあります。

この「共同相続」は、トラブルが想定されることから、あまりおすすめはできません。
今回は「共同相続」について、トラブルを回避するために、どんなことに注意が必要なのか、詳しくみていきましょう。

共同相続とは

共同相続とは、被相続人の相続財産を、複数の相続人が共有するかたちで相続する方法です。
例えば、被相続人の自宅を、相続人の配偶者と子が、いっしょに相続するケースです。
また、相続開始後、遺言や遺産分割協議で相続財産を分割するまでのあいだも、暫定的に全相続人が共同相続している状態です。

共同相続は、共有している相続人全員の合意がなければ手続きできないものがあるなど、制約が多いため、あまりおすすめできません。
なるべくはやく、相続財産の所有者を特定するようにしましょう。

共有財産とは

共有財産とは、原則、遺産分割協議の対象となる相続財産のうち、複数の相続人によって、共同相続されている状態の相続財産のことです。
具体的には、以下のようなものがあります。

《共有財産の一例》

  • 建物や土地などの不動産
  • 株式などの有価証券
  • 預貯金

《共有財産に含まれないものの一例》

  • 契約で受取人が指定されている生命保険金や死亡退職金など
    ➡受取人の固有財産とされるため(いわゆる「みなし相続財産」)
  • 借金などの、消極財産(マイナス財産)
    ➡民法で、共同相続人に、その法定相続分に応じて当然に分割されるものと定められているため

共同相続人と法定相続人の違い

共同相続人と、法定相続人は、とてもよく似ています。
どんな違いがあるのでしょうか?

《法定相続人》

  • 民法で定められた、被相続人の相続財産を受け取ることができる相続人のこと
  • 相続放棄した人や、相続廃除された人を含みます

《共同相続人》

  • 法定相続人の中で、被相続人の相続財産を、複数で共有する場合の相続人
    ※相続人がひとりだけの場合、共同相続は発生しないため、共同相続人はいないことになります
  • 相続放棄した人や、相続廃除された人は含みません

共同相続人ができること

単独でできる行為

共同相続の場合でも、他の共同相続人の許可を得ることなく、単独でできることがあります。

  1. 相続財産の維持・保存を目的とした行為
    ➡他の共同相続人の不利益にならないとされ、単独で行うことが可能です
  2. 相続登記(不動産の所有権移転登記)
    ➡共同相続した不動産の、所有権を変更する手続きは、誰にも伝えずに単独で行えますが
    相続登記が行われると、共同相続人全員に、固定資産税などの費用負担が発生したり、
    後々登記の費用が再度必要になるなどのリスクがあるため、注意が必要です
  3. 共有の持分に応じた使用
    ➡共有持分は独立した権利のため、例えば、自分の持分だけを、売却することも可能です
    ただし、後々トラブルが生じる可能性が非常に高く、やはり注意が必要です

全員の同意書が必要な行為

共同相続の中でも、単独で行えるケースをご紹介しましたが、反対に、共同相続人全員の合意が必要なケースも多く存在します。
共同相続人全員の合意が必要なケースは以下になります。

  1. 売却
    ➡自分の持分だけであれば、単独で売却可能ですが、相続財産そのものを売却する際には当然ですが、所有する全員の合意が必要です
  2. 変更
    ➡例えば、大掛かりなリフォームや建て替え、解体など、相続財産の状態を別のものに変えてしまうような場合には、不利益が生じる可能性もあることから、全員の合意が必要となります
  3. 預金の払戻し
    ➡原則、共有財産の預金の払戻しは、共同相続人全員の合意が必要です
    ですが、民法改正により、2019年7月1日以降に開始した相続より、
    預貯金払戻し制度が適用され、単独で一定額の払戻しを受けることが可能になりました

なお、入居者を募集するなどの、契約に関わる行為や、小規模なリフォームについては、共同相続人の過半数の合意が得られれば可能なケースもあります。

共同相続人を辞退する方法

なんらかの事情で、共同相続人を抜けたい(辞退)場合、以下2つの方法があります。

 

①相続放棄(すべてを手放したい場合)

  • 家庭裁判所へ、申述する必要があります
  • すべての相続財産について、一切の相続権を放棄します
    (もともと相続人ではなかったことになるため、負債の支払義務もなくなります)
  • 放棄した相続財産について、誰に相続させるか指定ができません
  • 自分に相続が発生したことを知ったときから3ヶ月以内に、申述を行う必要があります

②相続分の譲渡(譲渡したい人がいる、相続権を手放したくないなどの場合)

  • 相続財産を譲渡する人(譲渡人)と、譲渡される人(譲受人)が話し合って契約します
  • マイナスの財産も譲渡できますが、譲渡人は、債権者などの第三者との関係では、負債の支払義務を負ったままとなります
  • すべて、あるいは一部の相続分を、有償、または無償で、指定した人に譲渡できます
    相続人のほか、第三者を指定することも可能です
  • 遺産分割が行われるまでの間であれば、いつでも譲渡が行えます

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遺産分割協議をしないと共同相続状態が解消できない

共同相続を解消して、単独相続するためには、共同相続人全員で遺産分割協議を行い、合意した内容で遺産分割をする必要があります。

もし、遺産分割協議で、全員の意見が一致しないようであれば、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てて、調停委員に間に入ってもらい、相続人同士で解決を目指して話し合いをします。
調停でも解決しない場合は、自動的に審判手続きに移行し、裁判官が審判を下すことになります。

限定承認したい場合は共同相続人全員の同意が必要

相続方法には、以下の3種類があります。

  1. 単純承認:積極財産(プラスの財産)も、消極財産(マイナスの財産)も、すべて相続する方法
  2. 相続放棄:被相続人の相続において、すべての相続権を放棄する方法
  3. 限定承認:プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続する方法

この中で、③限定承認は、共同相続人全員の同意が必要です。

共同相続人の誰かひとりでも単純承認してしまうと、限定承認ができなくなってしまいます。
この点が、実際に限定承認の利用件数が少ない理由のひとつです。

共同相続した家に住み続けることはできるのか

共同相続した家に、住み続けることは可能です。
共有持分が2分の1だから、2分の1のスペースしか使用できない、なんてことはなく、共有している不動産の全部を使用することが可能(共有物の使用収益権)ですのでご安心ください。

ただし、あくまで不動産の所有権は共有している共同相続人全員にあります。
住んでいるからといって、単純に自分のものになるわけではないので、勝手にリフォームをしたり、解体したり、売却することはできません。

共同相続人が不動産を売ってしまった場合

例えば、共同相続人のひとりが、遺産分割前に、自分の相続分の不動産を、相続人以外の第三者に売却してしまった場合、売却された相続分の不動産を取り戻すことは可能なのでしょうか?
この場合、不動産を売却した相続人以外の共同相続人が、不動産を取得した第三者に対して、その価額と費用を支払うことで、相続分の不動産を取り戻すことが可能になります。

これを「相続分取戻権」といいます。

相続分取戻権は、不動産を売却した相続人の許可や、裁判所の介入を必要とせず、共同相続人のひとりが、単独で行使することができます。
ただし、売却から1ヶ月以内に行使しなければならないため、すみやかに手続きを行う必要があります。

共同相続人が不動産を売ってしまった場合

共同相続はトラブルになりやすい

共有財産を処分するためには、共同相続人全員の合意が必要です。
相続開始時は問題なくても、時間の経過とともに、トラブルが生じる可能性は高くなります。

  • 共同相続人のひとりが、認知症になった
  • 共同相続人の数次相続が発生した
  • 共同相続人のひとりが借金を負い、債権者が共有財産を差し押さえてしまった

今、自分たちには問題がなくても、その次の世代、さらに次の世代が共同相続する場合、共有財産の当事者は増え、複雑になっていくことは明らかです。

そんな状況で、共有財産を円滑に管理することは困難といえるでしょう。
問題なく共同相続できている間に、共有状況を解消することが安心です。

共同相続は早めに解消を。弁護士にご相談ください。

弁護士などの専門家が、「共同相続はおすすめしません。共同相続は早めに解消を」という理由を、少しでも知っていただけましたでしょうか?
相続について争わないように、相続人で平等に相続財産を分けた結果、共同相続となったことでトラブルが発生した、そんなケースは、残念ながら少なくありません。

共有財産を利用・管理するのも、処分するのにも、トラブルが予測されます。
共同相続すべきか悩んでいる方も、共同相続したことでトラブルが発生して困っている方も、まずは一度、弁護士にご相談ください。

広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛
監修:弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長
保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)
広島県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。