監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士
離婚がしたい。でも当事者間で話し合いをしても、話し合いが進まない・・・もしくは相手と話し合いをしたくない、連絡が取れないなど、理由は様々ですが、協議離婚が難しい場合は家庭裁判所にて離婚調停をするのもひとつの方法です。離婚方法のひとつでもある離婚調停について解説します。
Contents
離婚調停とは
離婚調停とは、正式には夫婦関係調整等(離婚)調停事件と言います。夫婦間での話し合いで離婚が出来なかった場合(協議離婚)に家庭裁判所の調停手続きで話し合いをします。離婚調停では、様々な離婚条件を決めて、離婚を成立させることを目指します。この調停では、家庭裁判所で第三者である裁判官や調停委員を交えて話し合いを行います。
離婚調停が成立すれば離婚をすることになります。
離婚調停のメリット・デメリット
離婚調停のメリットとして、第一に、相手方と直接話をしないでよいということがあります。調停では、第三者である、調停委員を交えて離婚について話し合いをすることから、相手方の反応を恐れず自分の意見を言うことができます。
第二に、離婚調停をすることで、こちらの離婚をしたいという意思が明確化する点もあります。離婚協議をしていても、相手方が離婚に向き合ってくれず話し合いが進まないということはよくある悩みの一つです。離婚調停をきっかけに、離婚協議が進むということも良くある話です。
また、離婚調停のデメリットは、裁判所で1ヶ月~2ヶ月に1回で調停が実施されるため、離婚するまでに時間がかかります。また平日の10時~17時までが家庭裁判所の開廷日となるため、出廷するために仕事を休んで家庭裁判所に行かないと行けません。
さらに、調停委員が常に公平で法的に正しいことを言っているわけではないということも注意が必要です。「調停委員が相手の肩を持っているようだ」「調停委員の言っていることを信じて合意したら後悔した」という相談は多数あります。
離婚調停の流れ
家庭裁判所に調停を申し立てる
家庭裁判所にこちらから離婚調停を申し立てる場合、相手方の住所地が管轄する家庭裁判所に申立てをします。(こちらの住所地の管轄の家庭裁判所では申立ては出来ません。)
所定の申立書に記入・捺印をして、裁判所に納める収入印紙と予納郵券(金額は管轄裁判所によって違うので確認が必要)と一緒に申立書を提出します。
調停開始
調停が申立てされると、裁判所から初回調停日の候補日の調整の連絡が入ります。裁判所から、相手にもこちらが提出した申立書が送付されます。当事者それぞれと裁判所の予定の調整ができ、調停日が決定します。初回調停日は申立書提出してから、およそ、1~2か月後の日時で決定することが多いです。
調停日当日は、まず申立人側から調停室に呼び出され、調停委員に離婚したい理由や離婚するにあたっての条件の希望などを聞かれ、伝えます。その後、相手方が調停室に呼ばれ、こちらが伝えた内容等が伝えられ、離婚条件について、話し合いをします。
1回目の調停での話し合いで解決できなかった場合、再度、1~2か月程度空けて、次回調停日を決めて、その日の調停は終了します。
調停終了
離婚調停をしたとしても、あくまでも離婚調停は話し合いの場で、必ずしも離婚が出来るわけではありません。調停が終了するには、調停成立した場合、調停が不成立した場合、調停を取り下げした場合があります。それぞれどんな場合なのか解説しましょう。
調停成立
双方が離婚調停での話し合いで離婚条件に合意できれば、それぞれ調停時に出廷し離婚条件を確認後、調停の場で離婚成立となります。離婚条件の確認の際は、裁判官が部屋まで来て調停条項(離婚条件)を読み上げます。読み上げられた内容が調停調書になります。
調停不成立
調停の話し合いで、それぞれの離婚する条件の折り合いが全くつかない場合や、相手側に離婚の意思が全く無い場合などで離婚の合意が出来ないと調停委員が判断した場合、離婚調停は不成立で終わります。
また相手が調停を繰り返し欠席し、話し合いが出来ない場合も不成立で終わります。
概ね、調停期日が2~4回程度重ねられても、全く調停成立の見込みがなければ、調停不成立となります。
調停取り下げ
申立人側が調停の申立ての取り下げをした場合も、調停は終了となります。取り下げについては、相手側の同意は必要ありません。自分で、「もう調停を続けたくない」と思って取り下げる場合や、裁判所から、様々な事情で調停の取り下げをすすめられるケースもあります。なお、相手側から調停の取り下げすることは出来ないことになっています。
離婚調停の準備
離婚調停をすることを決めた後、どのようにして、また、どのような準備をして、調停を進めたらいいのでしょうか。こちらで解説します。
申立書の作成前に確認すること
まず、申立書を提出する管轄の裁判所を確認します。管轄の裁判所は、自分ではなく、相手側の住所地の管轄の裁判所となります。また、特に女性側は離婚調停と同時に婚姻費用分担請求調停を申立てするのかも検討しましょう。これは、離婚成立するまでの生活費を月いくらで支払ってもらうかを決める調停となります。
離婚調停をした後、生活費が止められ生活ができないので、不利な条件で離婚してしまったという例は少なくありません。また、婚姻費用分担請求は申し立てた月から発生しますので、場合によっては離婚調停よりも先に申立てすることも検討してください。
申立書を作成する
自分で調停申立書を作成する場合、申立書には、それぞれの氏名・住所地・本籍地や、未成年の子供がいる場合には、未成年の子の住所・氏名・生年月日を記入します。また、申立書には、離婚したい理由(同居・別居の時期、離婚の動機)を記載します。
離婚の動機については、裁判所で取得できる定型書式だと、〇で囲むだけの非常に簡易なものですが、口下手な方は、調停期日に備え、自分が結婚生活で苦しんでいたエピソードや理由、などをメモしておくことをお勧めします。
なお、親権者、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割の条件なども希望があれば記載して下さい。
第一回調停期日までの準備
持ち物は認印と身分証明書を持参します。また服装としては裁判官や調停委員と会うので、心証の良い服装を心がけてください(男性ならスーツやジャケットを羽織る等。)。
また、調停委員へ伝える離婚したい理由や離婚する際の希望条件等(財産分与、養育費、慰謝料、親権、面会交流の条件)もあらかじめ整理をして、スムーズに伝えられるようにしておくといいでしょう。
また、こちらが有利となるような証拠(浮気などの証拠や暴力された時の証拠)などもあれば、一緒に提出するといいでしょう。
調停期日ごとの準備
前回の調停時で調停委員から宿題を出された場合、争点によって異なりますが、それを次回の調停までに準備をする必要があります。例えば、養育費でもめている場合は、収入資料の提出や月の家計収支表の提出を準備するように言われることが多いです。
また財産分与でもめている場合はすべての財産を記載した財産目録の提出が必要になります。親権でもめている場合は、こちらが親権を求める理由などを書面で提出するよう、宿題を出されますので、それぞれ調停委員から出された指示に従い準備をしてください。
調停の付属書類について
調停を申立てするときの付属書類として、まず戸籍謄本が必要となります。また年金分割を希望する場合は年金分割通知書を一緒に提出するとスムーズでしょう。年金分割通知書はお住まいの管轄の年金事務所に連絡をして取り寄せることが出来ます。
また任意ではありますが、申立人側は事情説明書の提出、相手方側は進行に関する照会回答書を記入して提出すると、調停時に裁判官と調停委員にこちらの希望・要望を事前に把握してもらえるのでいいでしょう。
離婚調停で聞かれること
離婚調停で聞かれることとして、
- 結婚した経緯
- 離婚したい理由
- 子供は何人か?年齢は?
- 親権を希望するか
- 離婚する希望条件(養育費・財産分与・慰謝料・面会交流など)
- 財産分与や養育費とは別に慰謝料を求めるか?
を聞かれることが多いです。
話し合いでの解決となるため、自分の希望がすべて通るわけではありませんが、自分の主張ははっきりと裁判官や調停委員に伝えるようにしましょう。
離婚調停にかかる期間や回数
離婚調停は協議離婚ができず、調停で話し合うことになっているケースが多いので、初回の調停で離婚成立することはなかなか難しいでしょう。離婚成立までに1年ほどかかる人(調停回数5~7回)もいれば、3年(15回~20回)ほどかかる方もいます。特に婚姻期間が長く、財産を多く保有している夫婦の場合、調停が長引くことが多いです。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停で決めておいたほうがいいこと
離婚調停では、離婚の成立に意識が行きがちですが、離婚調停では、是非次のことを決めておくことをお勧めします。
- 慰謝料
- 財産分与
- 養育費
- 面会交流
- 年金分割
上記を、決めずに離婚をしてしまうと、離婚調停が終わったとたんに、上記の調停や裁判を行わなければならないことが多々あります。上記の争いが根深く、離婚成立を先行させると決断した場合はやむを得ないですが、そうでなければ離婚調停の際に明確に決めておきましょう。
特に、慰謝料・財産分与・年金分割については、時効もあるので注意が必要です。また、養育費についても離婚後に決める場合は揉めやすいので、基本的には、離婚時に決めておくのが有益でしょう。
離婚調停に欠席したい場合はどうしたらいい?
あらかじめ決まっていた離婚調停の日にどうしても出席できなくなった場合、必ず事前に裁判所の担当書記官に連絡をして、相談をしましょう。担当裁判官の判断となりますが、期日変更の手続きをしてくれる場合や、相手側のみ出席してもらって相手側の主張を聞くため、予定通り実施する場合もあります。
また、出席は出来ないが電話が出来る状態であれば、電話会議に切り替えてくれる場合もあります。いずれにしても、無断欠席は避けて、裁判所に事前に報告をして相談しましょう。
やむを得ない事情があったとしても、無断で欠席をすると、調停委員の印象も悪くなり、不利になる可能性もあるので、絶対に辞めましょう。
離婚調停が成立したら
離婚調停が無事に成立したら、次は正式に離婚する手続き、離婚後の手続きが必要となります。こちらでその解説をします。
調停調書の確認
調停調書とは裁判所が作成する、裁判での判決と同じ効力を持つ重要な書類です。もし、今後取り決めた内容で約束を守られなかったとき、強制執行するために必要となる大事な書類となります。
調停調書は裁判所で交付申請して後日郵送されてきますので、(裁判所に取りに行くことも可能。)調停室で読み上げた内容が正しいかを確認し、誤字脱字(特に当事者や子供の氏名や住所など)がないか確認し、もしあればすぐに裁判所に連絡してください。
離婚届を提出する
離婚調停成立後は、10日以内に離婚届を提出する必要があります。
10日過ぎても、提出しない場合、無効とはなりませんが、5万円以下の過料が発生する可能性がありますので、速やかに提出するようにしましょう。
その他、提出すべき書類
子供の苗字(姓)の変更及び戸籍の入籍手続き
離婚に伴い、通常は婚姻前の氏に戻るのですが、婚姻中の氏のままを使用したい場合は「離婚の際に称していた氏を称する届」と戸籍謄本を役場に提出する必要があります。
子供がいる場合に注意が必要なのは、当然には、親権者と同じ苗字(姓)になるわけではなく、戸籍も当然に変更されるものではないということです。
親権者と同じ苗字(姓)に変更する場合には、家庭裁判所に、「子の氏の変更許可の申立書」を提出し、許可を得る必要があります。
家庭裁判所から、「子の氏の変更許可審判書謄本」が発行されますので、これを添えて、市役所に入籍届を出せば、入籍の手続きは完了します。
年金分割
年金分割をすることを取り決めた場合、年金事務所にて年金分割の手続きをする必要があります。こちらはお住まいの管轄する年金事務所に問い合わせのうえ、必要書類を準備してください。
また、年金分割については時効が2年となるため、年金分割の手続きが必要なのにもかかわらず、取り決めをしていない場合には、速やかに年金分割の手続きをすることをお勧めします。
ひとり親家庭に対する助成制度
離婚をしてひとり親となった場合に、それぞれの市区町村で「ひとり親家庭に対する生活支援」等が行われています。
経済的支援だけでなく、保育所の入園について優先的に入れるようになる等、様々な支援があるので、各種内容や手続きについてはお住まいの最寄りの役場に問い合わせするといいでしょう。
いきなり離婚裁判をしたくても、まずは調停が必要
相手と話し合いは出来ないと思うので、すぐに裁判離婚を、という方もいますが、日本では、離婚裁判をしたくてもまずは離婚調停からしか進めることが出来ません。そちらについてはこちらで解説いたします。
調停前置主義とは
日本の法律では、離婚する場合は、いきなり裁判は出来ず、調停が実施するように調停前置主義というものが定められています。例外はありますが、特に理由なく離婚裁判を提起しても、まずは家庭裁判所の調停に回されることになります。これを付調停といいます。
調停前置主義の例外
調停前置主義の例外として、離婚が調停で成立しない合理的な理由を裁判所に伝えることにより、例外的に調停をしないで裁判を行うケースがあります。
例えば、相手の所在が不明の場合や相手の生死が不明な場合、相手方が調停に出席できないことが明らかな場合(刑務所に収容中、海外勤務中)、相手方が調停に出席しない意思が固い場合などは裁判所の判断で、離婚訴訟から申立て出来る場合もあります。
調停を取り下げて訴訟できる場合もある
調停を取り下げると、調停が行われなかったものと同じ扱いになるため、調停を取り下げてしまったら、離婚裁判ができないと心配されるかもしれません。
しかし、調停で十分に協議された後に取り下げられたのであれば、離婚裁判が申立てできる可能性は十分にあります。ただ、形式的に申し立てられたけれども、全く話し合いがされないまま取り下げられた場合には、調停に回される(付調停)こともあります。
弁護士に依頼するメリット
離婚調停を弁護士に依頼した場合、弁護士が家庭裁判所の調停の場に同席するのが最大のメリットです。離婚調停は、簡単なようで簡単ではありません。
調停委員から相手方にどのように伝わっているのか、調停委員は何を考えているのか、調停委員の言っていることが法的に正しいのか、相手方をどうやったらうまく説得しこちらに有利に話し合いを進められるか等、弁護士は様々なことを考えながら、調停に挑んでいます。
離婚調停を一人する場合、見方がおらず不安でいっぱいで、思うように自分の意思を伝えられなかったという方は少なくありません。
弁護士は、依頼者にとって一番良いと考える方法を提案できる心強い味方となります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停を希望するなら弁護士にご相談ください
話し合いでの協議離婚が出来ない、離婚調停がしたい。
でも、どうしていいかわからない、または、なかなか手続きについて、自分でするには不安がある。そのような方はまずは専門家である弁護士に相談してみましょう。経験豊富な弁護士があなたの味方になってくれれば、精神的にも安定し、後悔しない離婚への道標を示してくれることでしょう。
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保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)