モラハラを理由に離婚できる?離婚する際に知っておくべきこと

離婚問題

モラハラを理由に離婚できる?離婚する際に知っておくべきこと

広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛

監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士

「人前で自分をバカにされる」「理由もなく無視し続ける」「大声で怒鳴ってくる」
このような行為はすべて“モラルハラスメント(モラハラ)”に該当します。モラハラは、暴力など身体的な被害はないものの、精神的に被害者を追い詰める悪質な行為です。

相手方のモラハラにつらい思いをされている方、離婚したいと思われている方は様々な苦しい思いをされていると思います。
この記事では、モラハラで離婚する方法や、相手が応じてくれない場合の対処法について解説していきます。ぜひご参考ください。

モラハラを理由に離婚できるのか?

モラハラを理由に離婚できる可能性はあります。
日本では主に、①協議離婚、②離婚調停、③離婚裁判の離婚方法があります。

このうち、①と②は当事者間の話し合いです。そのため、どのような離婚理由であっても、当事者双方の合意があれば離婚が成立します。

しかしながら、モラハラ加害者は「モラハラをしている自覚がない」ことも多く、話し合いでは離婚に応じない可能性もあります。
さらに、離婚を切り出すことで相手のモラハラがひどくなるおそれもあります。

このように、話し合いで解決できない場合には裁判で争うことになりますが、裁判で離婚するには、モラハラが法定離婚事由に該当すると認めてもらうことが必要です。

モラハラをしているのが姑の場合

モラハラの加害者が姑のケースもあります。
例えば、「姑が嫁(婿)だけに差別的な態度をとる」「過度な干渉」などが当てはまります。

こうした姑によるモラハラについても、夫婦で合意できれば離婚が可能です。一方、裁判で争う場合には離婚の問題は夫婦の問題であるため、夫婦の関係性から判断されます。
裁判で離婚が認められやすいケースと認められにくいケースを具体的に見ていきましょう。

〈離婚が認められやすいケース〉

  • 夫(妻)が、姑のモラハラを見て見ぬふりをしていた
  • 夫(妻)が、姑と一緒になってモラハラをしていた

〈離婚が認められにくいケース〉

  • 夫(妻)が、姑のモラハラから庇うなど味方となってフォローしていた
  • 夫(妻)が、姑のモラハラを注意し、関係修復に努めていた

子供がモラハラされている場合

子供がモラハラをされているだけでも、夫婦の合意があれば離婚ができます。
また、相手が離婚に応じず、裁判に発展した場合でも、モラハラの内容や程度によっては裁判で離婚が認められる可能性が高いでしょう。

このとき、「相手に親権が渡るのでは?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、子供にモラハラをしていた親が親権者となる可能性は低いので安心してください。
ただし、相手に親権が渡らないようにするためにも、以下のことに注意しましょう。

  • 子供の安全を確保することが最優先
    「相手がすんなり離婚に応じない」「裁判に時間がかかる」
    このようなケースではまずは子供の安全を確保するために別居するという方法や、児童相談所に一時保護を申請する方法があります。
  • 裁判ではモラハラの証拠が必要
    子供に対する「しつけ」と「モラハラ」の境界線はあいまいです。配偶者が子供にモラハラをしていたと証明できる確固たる証拠を集める必要があります。
    警察や公的機関への相談履歴も有効な証拠のひとつです。

モラハラの慰謝料はもらえる?

モラハラは被害者に精神的苦痛を与える行為であり、モラハラ加害者である配偶者に慰謝料を請求できる可能性があります。

ただし、モラハラは目に見える傷が残るものではなく、心の傷を負うものです。
慰謝料の請求は、相手のモラハラ行為で精神的苦痛を負ったことを客観的な証拠をもとに、証明しなければなりません。
そのため、慰謝料の請求がむずかしいのが実情です。

モラハラを理由に離婚する方法

モラハラを理由に離婚する方法には、「協議」「調停」「裁判」の3つの方法があります。

  • ①協議離婚
    離婚の可否や、親権・財産分与などの条件を当事者間である夫婦で話し合う方法です。
    双方が合意できれば離婚は成立しますが、モラハラ配偶者が応じないことも多く、その場合は離婚調停に進むことになります。
  • ②離婚調停
    家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停委員を介して話し合いをする方法です。
    モラハラ配偶者は外面がいいことも多く、相手のペースに乗せられ、離婚が認められず、裁判へと発展するケースも少なくありません。
  • ③離婚裁判
    調停でも解決できない場合に裁判所に判断を委ねる方法です。
    裁判では、モラハラを裏付ける客観的な証拠を示して、婚姻関係が破綻し、継続が困難なことを認めてもらう必要があります。

モラハラの証拠として有効なもの

モラハラがあったことを裏付けるために、客観的な証拠が必要です。

モラハラの被害は目に見えず、証拠が残りにくいという特徴があるため、証拠となり得る可能性のあるものを多く集めておきましょう。

〈モラハラの有効な証拠となり得るもの〉

  • モラハラの言動を実際に記録した録音・録画データ
  • モラハラ配偶者とのやり取りを記録したメールSNS
  • 心療内科や精神科への通院履歴診断書
  • 警察や公的機関への相談記録
  • モラハラを受けたことを記録した日記 など

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モラハラ配偶者が離婚してくれない場合の対抗手段

モラハラ配偶者がすんなり離婚に応じてくれるとは限りません。協議、調停、裁判と手続きが長引けば長引くだけ、離婚までの道のりが遠くなってしまいます。

さらに、長期に渡りモラハラの被害を受けていると、精神的に追い詰められ、正常な判断が難しくなるおそれもあります。
そこで、モラハラ配偶者が離婚してくれない場合の対抗手段をご紹介します。

思い切って別居する

モラハラをしてくる配偶者とは、無理に一緒にいる必要はありません。
離婚に応じてくれない場合は、思い切って別居をしましょう。

モラハラは、知らず知らずのうちに精神的に追い詰められていることが多くあります。
「自分は大丈夫だ」と思わずに、正常な判断ができるうちに物理的な距離をとることをおすすめします。
別居により心身を回復させることで、冷静にこれからのことを考えられます。

また、別居期間が3~5年と長期になれば、モラハラの証拠が不十分でも「婚姻を継続し難い重大な事由がある」とみなされ、裁判で離婚が認められる可能性があります。

別居したいけれどお金がない場合

別居するにあたって、経済的な不安を理由にためらっている方も多いと思います。
しかし、別居中の生活費は配偶者に「婚姻費用」を請求できる場合があります。

〈婚姻費用とは?〉
婚姻関係にある夫婦は、互いに助け合う義務を負うため、たとえ別居をしていても、収入の多い側は少ない側へ生活費(婚姻費用)を分担する義務があります。
相手が応じてくれない場合は、裁判所の手続き(調停・審判)を利用して請求することも可能です。

別居にあたっての注意点

別居に当たっての注意点は、以下のとおりです。

  • 別居の開始日・理由を明確にしておく
    モラハラの被害を受けている場合、別居するにあたってモラハラ配偶者の同意を得る必要はありません。しかし、離婚を有利に進めるためには、置手紙やメールで別居の開始日や理由を明確にしておくとよいでしょう。
  • モラハラ配偶者に別居先を知られないようにする
    居場所を知られるとご自身や子供に危害が及ぶリスクがあります。
    家族や共通の友人には、モラハラ配偶者に別居先を知らせないよう伝えておくことも大切です。
  • 親権を得たい場合、子供と一緒に別居する
    子供にモラハラの影響が及ぶ可能性もあるため、まずは子供の身の安全を考えます。
    子供の親権を考えている場合は、監護実績を作るためにも子供を連れて別居しましょう。その際、連れ去り別居にならないよう注意が必要です。

相手が下手に出ても受け入れない

モラハラ配偶者に対抗するうえで重要なのが、相手が穏やかになったり、下手に出て急に優しくなっても決意を固くし、安易に受け入れないことです。

モラハラには、「穏やかになるとき」と「モラハラを行うとき」を繰り返す、次のようなサイクルがあるのです。

  1. ①蓄積期
    常にイライラしており、ちょっとしてことでカッとなって、怒りやストレスをためていく時期
  2. ②爆発期
    溜まったストレスや怒りが爆発し、相手に暴言を吐いたり物を壊したり、モラハラを行う時期
  3. ③ハネムーン期
    自分の非を認めて謝ったり、一時的に穏やかになる時期

モラハラを行った後、謝ってきたり、急にご自身を気遣ったりする場合もあるでしょう。
しかし、「反省した、改心した」「もうモラハラはしないだろう」と安心するのは危険です。

モラハラが行われた後、急に優しくなるのはハネムーン期に過ぎず、多くの場合でまた同じサイクルが繰り返される傾向にあります。

モラハラ配偶者と離婚するためには、ハネムーン期に翻弄されないように強い意志を持つことが大切です。

モラハラでの離婚について不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

モラハラは心の暴力であることから、第三者に分かってもらいにくいという特徴があります。そのため、相手のモラハラにおひとりで長年耐えてきたという方もいるのではないでしょうか。

モラハラは許される行為ではありません。ご自身だけでなくお子様にも危険が及ぶ可能性もありますので、早期に離婚すべきケースでしょう。

モラハラ配偶者との離婚を検討されている方は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは離婚に詳しい弁護士が多数在籍しております。
ご相談者様のお悩みを丁寧にヒアリングし、どのように離婚を進めるべきか、どのような証拠が有効か、証拠の集め方などについてアドバイスいたします。

また、モラハラ配偶者と交渉を行えるため、ご相談者様やお子様の身の安全を確保することができます。

モラハラ配偶者との離婚については、まずは一度私たちにお問い合わせください。

広島法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛
監修:弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長
保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)
広島県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。