監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士
離婚がしたい・・・。まずどうやって離婚するの?何からどうしていいか戸惑いますよね。離婚する前には取り決めていたほうがいいことがたくさんあります。
そんな離婚する方法はいくつかあります、ここでは協議離婚について、お伝えします。
Contents
協議離婚とは
協議離婚とは、夫婦間で話し合いをして離婚をすることをいいます。法的な条件など関係なく、当事者間で納得した条件で合意ができれば、離婚届に署名・捺印(保証人の記入)をして、最寄りの役場に提出すれば、離婚が成立します。
協議離婚のメリット、デメリット
メリットについて
協議離婚のメリットは、双方が合意すれば、早く離婚できることや、離婚条件(例えば慰謝料1000万円など)を自由に決めて離婚できることです。
また、離婚届を提出すれば、離婚ができるので、費用もかからず、簡単に離婚をすることが出来ます。
デメリットについて
協議離婚のデメリットは、その時に決めた約束・条件を守ってもらえなかったときに、相手方に強制執行等が難しい場合があります。「そんな条件で約束した覚えはない」「むりやり署名させられただけだ」「合意書が無いから払う義務が無い」等と言われてしまった場合、養育費や財産分与をもらうことができないままになってしまう可能性があります。
協議離婚の流れや進め方
離婚を切り出し合意を得る
離婚を切り出す場合、何が理由で離婚がしたいのか(相手の浮気が理由で、相手方のモラハラが理由で、性格の不一致で・・・)を相手方に伝えて、離婚協議を始めるのが一般的でしょう。 また、離婚協議の際は、
- 離婚をしたら家はどちらが出ていくのか?
- 家は売るのか?
- 子供の親権は?
- 子供の養育費はいくらにするか?
- 家を含めた財産の分与はどうするのか?
など、離婚に付随した内容についても、自分の希望を伝えて、話しあいをして、合意を得ることが必要となります。
ただし、自分の要望だけでは通らないので、必ず譲歩しないといけない条件もあると思うので、自分の中で、これは譲れる、譲れないというものを決めておいたほうがいいでしょう。
離婚条件についての話し合い
離婚条件の話し合いについて決めるべき費目については、
①財産分与
②養育費
③親権
④面会交流
⑤慰謝料
などがあります。
離婚後に決めることも可能ですが、離婚後に決める場合の方が争いになりやすい印象があります。
特に、離婚をする場合は、双方何となくというよりも、どちらかが強く離婚を希望しているというケースが多く、その場合は、離婚したい側が、ある程度譲歩することにより合意が成立している場合もよくみられます。
離婚は、交渉優位に立てるか立てないかは、状況により様々なので、離婚条件について安易に合意することなく、慎重に合意しましょう。ただ、養育費や面会交流については、揉めないのであれば、先に決めておいたほうが良いでしょう。
話合いをメールで済ませることは可能?
離婚をしたいと思うくらいの相手でしたら、声も聞きたくないという方もいらっしゃるでしょう。離婚の話し合いをメールやLINEで済ますことも可能です。
むしろ、口頭で話し合い、その後、言った、言っていない等の問題になるのであれば、証拠として残るのでいいでしょう。
離婚条件について、法律的には口頭合意も有効な合意となるため、メールやLINEでも十分ですが、ただ、やはり「そんなつもりはなかった」「有効な合意ではない」等と言われかねないので、できれば、合意成立後には書面にしておく方が望ましいです。
離婚協議書の作成
離婚条件について合意が成立したら、離婚協議書を作成しましょう。
離婚協議書があれば、基本的には、その内容で合意が成立した証拠となります。
ただ、離婚協議書があったとしても、相手方が約束を破ったときには裁判をしないと法的な強制力が生まれません。
特に、養育費の支払いなどは、長期間続き、その間も双方の生活環境が大きく変化するため、約束が守られない可能性も十分あります。
その場合に備え、離婚協議書を公正証書化しておくと、もし養育費や財産分与など払うべきものを払ってくれなかった場合、強制執行をすることができます。
離婚届の提出
離婚届は住民票の所在地が管轄である役所に提出をします。離婚届に証人2名が記入する箇所がありますので、証人に依頼して、記入してもらうことも忘れないようにしましょう。証人は親族でなくても記入することが可能です。
また子供の親権はどちらなのか、記入欄があるので、必ず間違えないように記入しましょう。特に、離婚するかに争いがある場合、親権欄の記入ミスや記入漏れがあり、離婚届が受け付けられなかったというトラブルがよく生じます。
相手方が離婚届の作成に協力的ではないときには、ミスの内容にしましょう。また記載内容に不安がある場合は、平日の窓口で出せば、記入漏れや記入ミスのチェックを受けることができます。
一方、郵送や夜間窓口への投函をした場合には、記入漏れやミスで離婚届が受け付けられない場合、提出した離婚届が返却されないので注意が必要です。
協議離婚の証人になれる人
協議離婚において、証人になれるのは、成人であれば誰でもなれます。親族ではないといけない等の制限もありません。証人は2名の記入欄があり、証人も住所・本籍地を記載してもらう必要があるため、本籍地を覚えてない方もいると思うので、必ず記載してもらう時は、情報を把握してもらって記入してもらうようにしましょう。
協議離婚で決めておいた方が良いこと
協議離婚で決めておいたほうが良いこととして、
①財産分与
②養育費
③親権
④面会交流
⑤慰謝料
などがあります。協議離婚はお互いの合意があれば、自由に決めることができますので、離婚後のトラブルを回避するためにも、できる限り離婚前に話しあっておきましょう。
また、合意をした後に撤回することは基本的にできないと考え、合意をする前にはできる限り弁護士に相談しておくことをお勧めします。
財産分与
財産分与とは結婚した日から別居した日までに夫婦それぞれお互いに築きあげてきた財産を共有財産といいます。財産はどちらか一方の名義でも共有財産になります。主によくある共有財産は、それぞれの預貯金や不動産や生命保険や株などがあります。その財産は基本的には、離婚するときに2分の1に折半します。
一方、婚姻と関係ない相続財産や婚姻前から持っている財産は、特有財産といって財産分与の対象になりません。 財産分与も、協議離婚であればお互いの合意により、自由に分け合うことが出来るので、よく話し合いましょう。
子供がいる場合
親権
親権とは、子供の財産を管理する権利と子供の住居や教育などに関する権利を持つことです。婚姻時は夫婦ふたりで親権を持っていますが、離婚した場合は、どちらか一方がその権利を持つこととなります。協議離婚の際は、必ず親権者を決めなければ離婚できません。親権争いになった場合は、簡単には協議離婚はできないと考えた方がよいでしょう。
今の日本では、裁判所の判断で母親が親権を持つことが多いのですが、協議離婚で親権を決めるときは、話し合いで自由に決めることが出来ます。
養育費
養育費は離婚後に子供を養育するための費用について子供を養育していない側が支払う金銭のことを言います。協議離婚の場合は夫婦間で話しあった金額で養育費を決めることが出来ます。
裁判所が関与する手続きでは、養育費の算定表があり、双方の収入や子供の人数・年齢などにより、統計や計算式があり、それに基づいて定められるのが通常ですが、協議離婚であれば、養育費の算定表に縛られる必要はありません。そのため、夫婦間で合意をすれば、自由に取り決めることが出来ます。
面会交流
面会交流は子供と離れた側が子供と面会できる機会をいいます。 親権者となっていない親からすると、子供と会う機会は非常に重要ですので、しっかり話し合いましょう。
特に、面会交流は離婚時や別居時に十分な話し合いや合意がされないことが多いのですが、離婚後に決める場合は双方の感情差が大きく、争いになりやすいので、事前の協議で取り決めておくのが望ましいでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚慰謝料は請求できるのか
離婚慰謝料とは、離婚することになった場合に、離婚の破綻原因を作った相手方に対して、請求する金銭をいいます。離婚をしなければならない精神的な苦痛・損害に対する対価と考えて下さい。
離婚慰謝料の典型的なものは、浮気・不倫などの不貞行為に対する慰謝料がイメージできると思いますが、その他にもDVやモラハラに対する慰謝料も請求することができます。
裁判となった場合の、慰謝料の相場は、概ね100万円~300万円程度ですが、協議離婚であれば、相場に縛られないので柔軟な解決が可能です。
協議離婚にかかる期間
協議離婚は協議さえ進めることができれば、調停や訴訟で離婚するよりも比較的に早く離婚出来る方が多いのが一般的です。もし、離婚条件に争いが無く協議離婚する場合は、最寄りの役所に行って、離婚届を提出すれば、簡単に離婚が成立します。
ただし、離婚をする場合に相手方が協力的ではなく、話し合いにすら応じてくれず、ずるずると長引いている例が多数あります。その場合は、別居や調停の決断をして、速やかに弁護士に相談することをお勧めします。
協議離婚で成立しない場合
協議離婚が成立しないケースとして、離婚をしたくない人と、こちらの希望と相手方の希望が大きく乖離している場合などがあります。
特に離婚をしたい側が浮気等をして離婚をしたいと言った場合、有責配偶者となりますので、有責配偶者からの離婚の申し出は基本的に認められません。
また離婚条件(財産分与の金額、養育費の金額など)の折り合いがあわなければ協議離婚するのは難しいでしょう。その場合は、調停・裁判等により離婚をすることになります。
別居する
協議離婚できない場合は、別居を勧められることが多いのではないでしょうか?
実際、離婚において別居は非常に重要です。実際、離婚をすれば別居を予定しているのだからと、話し合いをするためにも離婚が成立してからと思う人もいるでしょう。
ただ、相手方が離婚を拒否する場合、夫婦関係が破綻していなければ、裁判所は離婚を基本的には認めてくれません。別居が一定期間経過したにもかかわらず関係が修復しない場合、婚姻関係が破綻したと評価され、離婚を希望している人は離婚しやすくなります。
そのため、別居が開始すれば、期間がたてば相手方も離婚せざるを得なくなるというプレッシャーが生じることになります。
離婚調停へ
離婚調停は家庭裁判所で第三者である調停委員を挟んで、話し合いをします。話し合いは片方の当事者と調停委員とが話し合ってから、その意見をもう一方の当事者に伝えたうえで話を聞き、また他方に意見を伝えて話し合うという方法を繰り返します。
調停では、直接相手方と話し合いをしないでよいという点が、協議離婚との大きな違いであり、また調停で成立した内容は、裁判を行ったときに出される判決文と同じ効力があります。
離婚調停は自分の話を相手方が聞いてくれない場合や、DVなどで話し合いが難しい場合には、特に有効でしょう。また、離婚を拒む相手方に対し調停を行うことで、相手方が復縁することをあきらめる効果も事実上あるでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
夫婦だけでのやりとりとなる協議離婚は難航する場合が多くあります。不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう
離婚協議は一度こじれると、夫婦間だけでは、なかなか決められないことも多々あると思います。また、養育費の金額、慰謝料、財産分与など専門的な知識が必要となる場面も少なくありません。
離婚をしたいという気持ちから、不用意な取り決めをしてしまい、離婚後生活が成りゆかないという相談も多々あります。
協議離婚は手続きが簡易であるからこそ、安易な取り決めや自分にとって不利な取り決めをしてしまったり、また、離婚前に決めておくべきことを決めず、離婚後に泥沼の争いになってしまったりするケースがあります。
離婚問題で、不安を感じた場合は、相手方と合意をする前にまずは、専門家である弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)