
監修弁護士 西谷 剛弁護士法人ALG&Associates 広島法律事務所 所長 弁護士
バイク事故は大怪我につながる可能性が高い交通事故です。
バイクと車がはげしく衝突した場合、バイクの運転者は身体が投げ出されてしまうため、頭や全身を強く打ちつけ、車の運転者よりも重傷を負うことがあります。
バイク事故に遭った場合も、車の事故と同じように慰謝料や治療費、休業損害などの損害賠償を事故相手に請求できますが、損害賠償請求するにはバイク事故特有の注意点があります。
今回はバイク事故について、慰謝料の算定基準や過失割合などを解説しますので最後までお読みください。
Contents
バイクが被害者の交通事故慰謝料は車同士と比べて高額になりやすい
バイクで事故に遭い怪我をした場合、以下2つの慰謝料を請求できます。
- 入通院慰謝料:怪我による入通院によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料
- 後遺障害慰謝料:怪我が完治せず後遺障害が残った場合の精神的苦痛に対する慰謝料
入通院慰謝料は治療期間が長期になるほど高額になります。
バイクでの事故は大怪我につながりやすいので、入通院期間も長くなる傾向にあります。
また、治療後に後遺症が残ることもあり、後遺障害等級認定で後遺障害が認められると入通院慰謝料とあわせて後遺障害慰謝料が請求できます。
そのため、バイク側が被害者となる交通事故では、車同士の事故よりも慰謝料が高額になりやすいです。
基準による慰謝料の差について
交通事故の慰謝料は以下3つの算定基準によって金額が決められます。
- 自賠責基準:自賠責保険が用いる算定基準で必要最低限度の補償が目的
- 任意保険基準:各任意保険会社が独自に設定している算定基準で非公開となっている
- 弁護士基準:過去の裁判例をもとに作られたもので、裁判所や弁護士が用いる算定基準
同じようなバイク事故で同程度の怪我をしたとしても、算定基準によって慰謝料額が大きくかわります。
基本的には「自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準」の順に慰謝料が高額になります。
バイク事故の場合、車の事故よりも慰謝料が高額になることが多いので、算定基準による慰謝料の差も大きくなります。
反面、バイクが加害者だった場合は慰謝料を回収しきれない場合も
バイクが加害者だった場合、被害者としては、加害者から十分な慰謝料が受け取れない可能性があります。
バイクは車に比べて「任意保険」の加入率が低いからです。
- バイク(二輪車)の任意保険加入率:44.8%
- 車(自家用普通乗用車)の任意保険加入率:83.0%
出典:損害保険料算出機構「任意自動車保険用途・車種別普及率」(2021年3月末)
任意保険に加入していない場合、通常は加害者の自賠責保険から慰謝料が支払われます。
ただし、自賠責保険は被害者保護のための最低限の補償を目的とするため、事故の怪我によって生じた傷害部分の損害に対しては支払限度額が120万円までと決められています。
そのため、傷害部分に関する損害賠償額が120万円を超えてしまうとその分は補償されません。
自賠責保険を超える分は加害者本人に請求できますが、加害者の収入や経済状況によっては慰謝料が受け取れない可能性があります。
バイク特有の過失割合と慰謝料への影響
バイクのすり抜けによる事故が過失割合に影響するケース
道路を走行していると、車の間をバイクがすり抜けて走行する場面を見かけます。すり抜けとは追い抜きや追い越しのことです。
バイクが車の横をすり抜けて車の前に出たために(追い越し)衝突した場合にはバイクに7割から8割の過失がつきます。
バイクが道路上に駐停車中の車の横をすり抜けようとしたところ、車に一方的にぶつかった場合は、バイクに10割の過失がつきます。
バイクが、交差点で左折しようとする車の左横を後ろからすり抜けて直進しようとして衝突した場合は、バイクに2割の過失がつきます。
過失割合とは交通事故が発生した責任が「誰にどのくらいあるか」を割合で示したものです。
事故状況によっては、バイクにも大きな過失がつくことがあります。
バイクに過失がつくと、本来受け取れる慰謝料から過失割合分が差し引かれ、受け取れる賠償金が減ってしまいます。
ドア開放車にぶつかった場合
駅のロータリーやタクシー乗り場などでは、停車中の車がドアを開けたところに、後ろからすり抜けて走行してきたバイクが接触する事故が起こることがあります。
このような事故を「ドア開放事故」といいます。
ドア開放事故の基本の過失割合は「車:バイク=9:1」です。
車側にはドアを開けるときに後ろからバイクや自転車、歩行者などが来ないか注意する必要があるため、車側に過失が大きくつきます。
一方、バイク側も前方に注意して走行しなければいけないので1割の過失が認められます。
過失があると受け取れる慰謝料が減る
バイク事故にかぎらず、どんな交通事故でもご自身に過失がつけば受け取れる慰謝料は減額します。
交通事故では「損害賠償計算ツール」を使って事故の相手に請求できる損害賠償金の目安を知ることができます。
しかし、損害賠償計算ツールはあくまでも過失がない想定で計算されます。
では、過失割合が損害賠償金にどのように影響するか、実際に過失の有無を例に挙げてみてみましょう。
<例>車とバイクの衝突事故、バイク側の損害額:200万円
■【過失割合】車:バイク=10:0
バイク側が受け取れる賠償金:200万円
■【過失割合】車:バイク=8:2
バイク側が受け取る賠償金:160万円
車側に請求できる賠償額からバイク側の過失割合2割分が減額される
200万円×0.2=40万円
損害額が同じでも、過失が2割つくだけで「40万円」減額されてしまいます。
慰謝料を含めた全体の損害額が減額されることから、過失割合によって受け取れる慰謝料の金額も減ります。
バイク事故の損害額が大きくなるほど過失割合の影響が大きくなります。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士の介入によってバイク事故の慰謝料を増額できた事例
【平成27年12月16日 東京地方裁判所】
●概要
バイクと大型車の交通事故です。
バイクに乗っていた被害者はバイクを停止している間に右側から追い抜こうとした大型車に右足を踏まれ、さらに大型車に接触されて大怪我を負いました。
大型車を運転していた加害者は、被害者に怪我を負わせたにも関わらず、謝罪することなく罵声を浴びせて事故現場を立ち去りました。
また、加害者の保険会社は、まだ治療が必要な時期であったにも関わらず治療費および交通費の支払いを打ち切りました。
事故後、被害者は死亡し、遺族が加害者と保険会社に対して損害賠償を請求する訴訟を起こしました。
●判決
遺族が請求した損害賠償金のすべては認められなかったものの、事故と因果関係が認められた分の治療費や交通費、逸失利益、慰謝料などが認められました。慰謝料については以下のとおりです。
- 入通院慰謝料140万円
- 後遺障害慰謝料110万円
また、加害者は事故後、被害者に怪我をさせたにも関わらず事故現場を立ち去ったことが考慮され慰謝料増額分20万円も認められました。
バイク事故の慰謝料は弁護士にご相談ください
交通事故の慰謝料は算定基準によって金額が大きくかわります。
バイク事故で相手方の任意保険会社から提示される慰謝料は任意保険基準で算定された金額になります。
保険会社によってはバイク側の過失割合を大きくして慰謝料が減額されている場合もあるので注意が必要です。
怪我の程度にもよりますが、バイク事故で長期間の治療を余儀なくされた場合は、弁護士基準で算定することでさらに慰謝料が増額することがあります。
バイク事故に遭った際は、弁護士法人ALGにご相談ください。
弁護士に相談することで、慰謝料を弁護士基準で算定し直したり、過失割合の交渉をしたりして受け取る賠償金を増額できる可能性があります。
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保有資格弁護士(広島県弁護士会所属・登録番号:55163)